研究実績の概要 |
本年度も昨年に引き続き三次曲面の有理点について研究した. 特に, 有理数体上の対角的三次曲面に有理点が存在するための条件について考察し, 楕円曲線のTate-Shafarevich群の有限性の仮定の下, 有理点が存在するための係数に関するいくつかの十分条件を与えた. 昨年度には, 有理点を持つような特別な対角的三次曲面の無限族を構成した. 本年度に得られた結果は, 同様に楕円曲線のTate-Shafarevich群の有限性の仮定の下, ある素数pに対して係数がp進数体においていくつかの条件のうち一つを満たす場合に, 対角的三次曲面に対して有理点の存在に関するHasse原理が成り立つ, というものである. なお, 素数pが3でない場合にはSwinnerton-Dyerによる結果があり, 我々の結果はp=3の場合にも適用できる. 上記の条件のうち, 係数が満たすべき条件は, 比較的容易に確かめられるものである. 上で得られた条件を満たすような対角的三次曲面に対しては, 「Brauer-Manin障害」と呼ばれる, Hasse原理の障害が存在しないことが既に知られていた. したがって, 非常に限られた場合ではあるが, 対角的三次曲面のあるクラスに対してはBrauer-Manin障害はHasse原理が成り立つためのただ一つの障害であることが証明できたことになる. 一般の対角的三次曲面(あるいは, 非特異三次曲面)に対しては, Brauer-Manin障害はHasse原理が成り立つための唯一つの障害であるかどうかは知られていない.
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