研究課題
申請者は、植物バイオマスの高効率変換へと応用することを目指し、自然界で植物バイオマスを効率的に分解する担子菌の生分解機構を解明すべく研究を行ってきた。本研究では、担子菌分解機構に関わる酵素群を植物改変のための遺伝子材料として利用することで、易分解性バイオマス生産植物の作出を目指す。本年度は、植物細胞壁分解性の重要なファクターになるキシランの構造を変化させるために、木粉培地で担子菌が多く生産したキシラン分解酵素を選択した。そこで、担子菌由来ターゲット遺伝子としてキシラン分解関連酵素の遺伝子クローニングを行った。得られた遺伝子をサブクローニングしたベクターを用いてアグロバクテリウムにより、ポプラの形質転換を行った。担子菌遺伝子が導入されたポプラを培養し、RT-PCRおよび活性測定を行うことから、導入遺伝子が転写産物およびタンパク質レベルで誘導されていることを確認した。また、得られた組換え植物を純化し、開放的に生育させることから木化した植物体をサンプリングした。この際に成長解析をおこなったところ、野生型と比較して組換え型では茎の長さおよび太さについて減少する傾向があり、本葉の形状も少し変化していた。また、得られたサンプルに対してアニリンブルーおよびサフラニンで染色し、顕微鏡観察を行うことから、茎の細胞形成および細胞壁の変化を観察したところ、形成層付近に違いが観察された。特に、師部を形成する細胞の形状に変化がみられた。以上の結果から、本年度は、細胞壁形成が変化した組換えポプラの作出に成功し、易分解性植物の作出という目標に近づいた。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定である組換えボブラの作出が成功していることに加え、ポプラの細胞壁を解析する技術を確立しており、共同研究として既に様々な組換え植物の解析に応用していることから、実験を発展的に進めていると考えられる。さらに、国内および海外学会に精力的に参加し、論文が海外学術誌に2報掲載され、所属する理化学研究所BMEPからポスター賞を受賞していることから成果としておおむね順調に進展していると考えている。
得られた組換えポプラの細胞壁構造について構成糖分析およびNMR解析を行う予定である。また、キシランに特異的な蛍光色素をしようすることから詳細な細胞壁変化を顕微鏡観察により明らかにするよていである。現在、組換え植物体の分解性評価のためのポプラの培養条件および酵素糖化条件を検討中である。
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Applied and Environmental microbiology
巻: (In press) ページ: 1412-27
Mycologia
巻: 105(6) ページ: 1412-27
10.3852/13-072