研究実績の概要 |
本年度は論文執筆を行った。まず、統計検定法の再検討を行った。異なる光環境で選択を受けた集団に関して、すべての組み合わせ計9組と対照検定として同じ環境で飼育した集団同士の比較計6組の検定を行い、結果を比較したところ、1対1の検定を複数回行う方法は本研究には不適切であると判断されたため、最終的に3つのレプリカ集団のシーケンス結果を合わせたデータを用いてFisher’s exact testを行い、有意差上位5%に着目することにした。他にもAllele Frequency Change(AFC)やOdds ratioなどの異なる指標を用いて適応に関与するゲノム領域の候補を絞り込んだ。これまでの研究結果をまとめ、アメリカの遺伝学会誌G3(GENES,GENOMES,GENETICS)に投稿し受理された。 同時に進めていたトランスクリプトーム解析に関して、次世代シーケンサーを用いたRNAseqの結果を確認するために、qPCRでいくつかの遺伝子の発現量を調べて、RNAseqのデータと一致することを確認した。また、前述の選択実験で異なる光環境で選択を受ける遺伝子の候補84個とトランスクリプトーム解析で発現量に変化が見られた遺伝子310個を比較したところ3つの遺伝子が重なることがわかった。3つは、キチン分解酵素や神経系で発現している遺伝子、卵黄膜成分の遺伝子であり、交尾行動から産卵までの適応度に影響する形質への関与が予想された。トランスクリプトーム解析に関しては、現在論文を執筆中である。
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