研究課題/領域番号 |
13J01165
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
服部 泰佑 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ウラン系強磁性超伝導体 / 核磁気共鳴法 / 重い電子系 / スピン三重項超伝導体 / 強磁性量子臨界 / 磁場誘起超伝導 / NMRナイトシフト / 超伝導発現機構 |
研究概要 |
1. NMRナイトシフト測定による超伝導対称性の検証 常圧下、希釈冷凍機を用いた極低温におけるNMR測定から、強磁性超伝導体UCoGeの超伝導状態におけるナイトシフト(自発磁化と垂直方向)を測定した。結果、a, b方向のナイトシフトは常伝導状態から殆ど変化せず、自発磁化と垂直方向のスピン磁化率が超伝導転移に伴い殆ど変化しないことが明らかになった。この結果を定量的に解析し、提唱されている理論と比較すると、UCoGeではスピン三重項超伝導が生じていることが支持された。強磁性磁気揺らぎが超伝導の発現に重要である場合、超伝導はスピン三重項超伝導になることが知られている。そのため、スピン対称性を直接的に示した本成果は、超伝導に強磁性縦揺らぎが重要であるという以前の報告を裏付けする。加えて、これまでに報告されていた臨界磁場の振る舞いともコンシステントな結果であり、本系で生じている特異な超伝導を理解するうえで重要な結果である。また、2000年以降に発見され研究されているウラン系強磁性超伝導体において、超伝導下でのNMRナイトシフト測定に初めて成功した例となる。 2. 強磁性縦揺らぎの垂直方向磁場による制御 強磁性超伝導体UCoGeに対し、超伝導発現に重要な強磁性縦ゆらぎと直交する結晶軸のa、b軸方向に磁場を印加したとき強磁性縦ゆらぎがどのように変化するのか、またその変化と超伝導にどのような関係があるのか調べた。その結果、磁場をa軸に印加したときは強磁性転移温度に磁場依存性は見られないが、磁場をb軸方向に印加したとき強磁性転移温度が抑制されることを突き止めた。これに対し超伝導は磁場をb軸方向に印加した場合超伝導転移温度が増大することが知られている。これらの結果を考慮すると、b軸に磁場を印加することにより強磁性転移温度が抑制され、低温で強磁性ゆらぎが増大することにより超伝導転移温度が増大していることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の成果(2. 強磁性縦揺らぎの垂直方向磁場による制御)のキーポイントは如何に試料を精度よく角度制御できるかにあるが、二軸回転機構を持っNMRプローブを用いることで角度を精密に制御することに成功した。その結果、磁気揺らぎと超伝導の間に正の相関を見出せたことは超伝導発現機構を解明する上で重要な結果である。また、二軸回転機構による磁場方向制御の手法は今後のNMR測定においても非常に有用である。
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今後の研究の推進方策 |
UCoGeは常圧下で強磁性と超伝導の両秩序を示すが、静水圧を加えていくと1GPa程度の圧力で強磁性が消失することが知られている。興味深いことに、超伝導は強磁性とは異なり、強磁性の臨界圧力で最大の転移温度を持ち、強磁性が消失したのちも生じることが報告されている。しかし、強磁性と共存する領域での超伝導状態と、強磁性が消えてからの超伝導状態の詳細や、圧力下におけるUCoGeの物性についてはあまり調べられていないのが現状である。そのため、圧力下での核磁気共鳴法の準備を進めてきた。現在、静水圧力下(~2GPaまで加圧可能)における核磁気共鳴法の測定準備を完了し、^<59>Co核の核四重極共鳴法(NQR)から詳細な物性を調べている。今後、圧力下でのNMR/NQR測定を進め、強磁性及び超伝導の性質が圧力によってどのように変化するか調べる。
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