研究課題/領域番号 |
13J01166
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
坊野 慎治 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 液晶 / ソフトマター / 液晶ナノエマルション / 液晶ナノミセル / DDS |
研究実績の概要 |
バルクにおいてスメクチック相を発現する液晶分子をコア中に導入し、スメクチック液晶ナノミセルを作成した。今年度はこのスメクチック液晶ナノミセルについて、次の2点を目的とし研究を行った。 1、スメクチック液晶ナノミセルがコア中の液晶分子が層秩序を有することを確認する: コア中の液晶分子の層秩序を確認するために放射光を用いたX線回折実験を行った。その結果、バルクにおけるスメクチック-ネマチック相転移温度以下の温度において回折ピークが得られ、液晶ナノミセルが層秩序を有することが明らかになった。また得られた回折ピークから見積もった(a)層間隔は導入した液晶分子のバルクにおける層間隔と一致しており、(b)相関長はエマルションサイズ程度に抑制されていることが明らかになった。これらの結果からコア中の液晶分子が層秩序を有することが明らかになった。 2、コア中の液晶分子の運動性に対する層秩序の効果を明らかにする: ミセル間の液晶分子の拡散過程を用いて、コア中の液晶分子の運動性を見積もった。この拡散過程は、2種類の液晶ナノミセルを混合した溶液において、それぞれのミセル間で液晶分子が拡散する過程である。この過程の拡散速度は、コア中の液晶分子のミセル動径方向の運動性を反映していると考えられる。実験によって得られた拡散速度は、温度の低下に伴い急激に減速することが明らかになった。この結果は、層秩序の発展に伴いコア中の液晶分子の運動性が低下することを示しており、層秩序が液晶分子の運動性を抑制することを示している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はミセルコアに層秩序を有するスメクチック液晶ナノミセルを作成することを目的として研究を行った。そしてスメクチック液晶ナノミセルが層秩序を有することを明らかにし、さらにコア中の液晶分子の運動性が層秩序により抑制されていることを示唆する結果を得た。これは層秩序によりコア中の液晶分子の拡散を制御できることを示しており、計画通りの発展である。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度ミセル間における液晶分子の拡散過程を用いて、コア中の液晶分子の運動性について研究を行った。しかし、この拡散過程の素過程において、(a)水を介した拡散、(b)ミセル同士が接触している際の拡散どちらが支配的なのか明らかになっていない。そこで来年度は拡散過程の素過程を明らかにするために研究を行う予定である。 また、拡散過程の進行に伴った、層秩序の変化について着目し研究を進める。特に、時分割放射光X線回折実験により層秩序の相関長を精密に測定する予定である。
|