研究課題
本年度は、①胃癌組織内におけるmiR-143発現の局在の確認②細胞株を用いたmiR-143の機能解析と標的遺伝子の同定を以下の通り実施した。【胃癌組織内におけるmiR-143発現の局在の確認】①ln situ hybridizationによるmiR-143の局在解析で、スキルス胃癌組織内の間質成分に含まれる線維芽細胞の一部にmiR-143の発現が認められた。②臨床情報が利用可能であった68症例の胃癌切除標本を材料にmiR-143の発現を検討した結果、miR-143の発現上昇はStageの進行した症例と、スキルスの症例との間にそれぞれ統計学的に有意な相関を認めた。また、miR-143の発現は胃癌患者の不良な生命予後と関連した。以上より、miR-143はスキルス胃癌間質の線維芽細胞に局在し、胃癌の予後予測マーカーとして有用であることが示唆された。【細胞株を用いたmiR-143の機能解析と標的遺伝子の同定】①スキルス胃癌患者由来の線維芽細胞であるNF-38、CaF-38対しmiR-143の強制発現およびノツクダウンを行い、線維芽細胞内でのmiR-143の機能を検討したところ、miR-143のノックダウンによりスキルス胃癌の線維性間質と関連するcollagentype IIIの発現量が低下した。②スキルス胃癌細胞株HSC-44PEとCaF-38の共培養を行った。その結果、miR-143、collagentype IIIをノックダウンしたCaF-38と共培養した場合では、HSC-44PEの増殖能が低下した。③胃癌細胞株におけるmiR-143の機能を検討したところ、miR-143の強制発現を行ったところ、胃癌細胞株の浸潤能の低下が見られた。以上より、miR-143は癌細胞周囲の線維芽細胞で発現し、collagen type IIIの発現制御を介してスキルス胃癌の進展に寄与することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
今年度得られた成果を論文にまとめ、Cancer Science誌で報告した。さらに、Research High1ightに選出され、大きく注目を浴びる成果となった。また、国内外での研究発表においても、大きな反響を呼ぶ結果となった。一方で、本年度は注目したスキルス胃癌問質の線維化を形成するcollagneをmiR-143の夕一ゲットとして同定し、解析を行ったことから、マイクロアレイ解析による網羅的なmiR-143の標的の解析を行うことが出来ていない。次年度では、当初から予定していたExososmeの解析と同時に、この点に関しても更なる解析を行いたい。
今回の研究結果から、スキルス胃癌組織において、miR-143は間質の線維芽細胞に局在しており、collagenの制御を通じて、胃癌細胞の進展に大きく影響することを明らかとした。一方で、周囲間質で発現亢進しているmiR-143が、細胞外輸送小胞の一つであるExosomeに内包された状態で周囲疵細胞に取り込まれることが予想される。しかし、本研究成果では、miR-143は胃癌細胞の浸潤能を抑制するという結果が得られている。この矛盾点について、さらに詳細に解析するため、今後は正常の線維芽細胞と癌周囲の線維芽細胞で形成されるExosomeの構造的違いが無いかどうか、これらExosomeが癌細胞に取り込みが行われるのかどうかについて詳細に検討する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (3件)
Cancer Science
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