研究課題
本研究の目的は、トポロジカル絶縁体の表面に存在する特殊な電子状態を電気伝導として検出すること、およびその特殊な電子状態と超伝導状態とが組み合わさった系における物性を実験的に調べることである。研究代表者は、母物質をトポロジカル絶縁体にもつ超伝導体として知られているCu_xBi_2Se_3に着目してその単結晶を育成し、X線回折による構造解析や磁気抵抗測定などの手法を用いてその超伝導特性を研究している。トポロジカル絶縁体としての性質に迫る詳細な測定に先立ち、今年度は特に、バルク絶縁性の高いBi_2Se_3単結晶と、超伝導体積分率の高いCu_xBi_2Se_3単結晶の育成を目指して研究を行った。まずBi_2Se_3について、新たに気相成長法を用いることで、通常の溶融法で得られる試料と比較してバルクキャリアが一桁少ない単結晶試料の育成に成功した。得られた試料は、次年度以降の超伝導接合の実験に用いる予定である。Cu_xBi_2Se_3試料については、超伝導体積分率の高い試料を得るためにまず、銅の添加で超伝導が発現する条件を探ることとした。具体的には、銅の添加量xをx=0-0.3の範囲で変化させたCu_xBi-2Se_3単結晶を育成し、それらの磁気抵抗を測定した。その結果、キャリア密度が10^18~10^20/㎤までの広い範囲に渡るキャリア数に対応するBi-2Se_3の電子状態の系統的なデータを得た。現時点では超伝導体積分率の向上までには至っていないが、今回得られたデータは、超伝導発現条件を探る上で有用なデータであり、今後体積分率の高い試料の育成を目指していく上で重要である。
2: おおむね順調に進展している
研究課題として挙げていたCu_xBL2Se_3の電子状態について、磁気抵抗の測定から系統的なデータを得ることができた。また、2年目以降で超伝導接合の実験を進めるために、本年度では良質な単結晶の育成が最大の課題であったが、これまでに気相成長によって良質な単結晶育成に成功した。このように、次年度以降に超伝導接合の実験を行える準備が整ったため、おおむね順調に進展しているといえる。
今後は育成した単結晶を用いて、超伝導接合の実験を推進していく。具体的には、トポロジカル絶縁体であるBi_2Se_3と超伝導との接合を作成し、その伝導特性を評価することによって、トポロジカル絶縁体の表面に存在する特殊な電子状態についての研究を進めていく予定である。これまでに、育成した試料を劈開することでナノスケールの結晶試料を作成し、電子線リソグラフィーなどの微細加工技術を駆使することによりナノスケールのホールバー試料を作製した。このように試料作成のプロセスは本年度の間にある程度確立できたため、今後はこのような試料を測定していく予定である。また、本年度得られたデータを基に育成条件を見直し、引き続きCu_xBi_2Se_3単結晶の育成にも取り組んでいきたい。
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Physical Review B
巻: 89 ページ: 134512-1-9
10.1103/PhysRevB.89.134512
http://kadowaki.ims.tsukuba.ac.jp/index.html