研究課題/領域番号 |
13J01212
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
内之宮 光紀 九州大学, 大学院理学研究院, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 細胞性粘菌 / 利他行動 / 菌根菌 / 相利共生 / 資源分配 |
研究概要 |
申請書内で言及されている研究目的・内容[1]の研究が国際誌Journal of Theoretical Biologyに掲載された。この研究では細胞性粘菌が子実体を形成する際に分泌する化学物質による柄と胞子の分化制御を考慮して、同種他系統の細胞集団と混ざる場合と混ざらない場合の子実体形成の違いについて言及した。細胞性粘菌の変異体の中には、野生型の系統と混ざって子実体を作るときには単独の場合よりも多くの胞子を作るCheaterとよばれるものがいる。今回の数理モデルから、DIF-1への感受性が低い系統が他の系統と混ざったときにより多くの胞子を作り、Cheaterとして振舞うことがわかった。 さらに、このモデルを使って化学物質の分泌速度と感受性の進化に関する解析も行った。他系統と混ざらない場合には、産生コストを減らすために分泌速度を減らし、最適な柄と胞子の比率を保っために感受性を高めるように進化することがわかった。しかし、他の系統と混ざる場合には、感受性が低すぎると混ざったときに柄にされてしまうリスクがある。そのため、リスクを減らすために感受性を低くし、最適な柄と胞子の比率を保つために分泌速度を増やすように進化する。結果として、他の系統と混ざらない場合に比べてより多くのDIF-1を産生し、感受性が低くなることがわかった。この研究は、形質の進化しか考えていなかった従来の進化理論に対し、形質を発現させるメカニズムの進化を考慮したものである。今後遺伝子発現なども加えて発展させていく。 また、申請書の研究目的・内容[2]に関する最初の研究として植物と菌類の相利共生関係について、もっとも単純な一対一の場合についての研究も進行しており論文の投稿準備中である。この研究では植物と菌類の資源分配を扱っているが、従来の資源分配に関する研究は生物の成長を考慮していなかった。本研究では植物と菌の成長を考慮することで、双方が相手に分配する場合に常に一定量の分配が行われる可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的・内容[1]の研究が国際誌に掲載され、研究目的・内容[2]に関する研究も投稿準備中であり、さらに、研究目的・内容[3]についても数理モデルの概略ができているため。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的・内容[1]に関しては、平成25年度の研究で一つの化学物質についてのみ考慮していたので、考える化学物質、もしくは遺伝子の数を増やした数理モデルへと拡張する。現在は候補となるものをまとめている。 研究目的・内容[2]については現在の研究結果をできるだけ早く投稿し、より複雑な一対二の場合へモデルを拡張する。このために協力ゲームや微分ゲームの考えが有効だと考えられるため、現在はその手法を取得中である。 研究目的・内容[3]についての数理モデルは大部分が構築できたので、細かい改良と解析を行う。
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