研究課題/領域番号 |
13J01247
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
鈴木 祥 中央大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 不平等条約 / 新規通商条約 / 商人領事 / 条約改正 |
研究概要 |
1、幕末の商人領事問題…本研究では、ポルトガル、スイスなどの小国が任命した商人領事(商業に従事する名誉領事官)がもたらした問題について検討した。そして、武士身分による官職専有を原則とする江戸幕府が、各国に商人領事の禁止を要求したこと、およびイギリスも幕府に一定の理解を示したことを明らかにした。本成果は、幕末期の日本が西洋の領事官制度を受容する過程を解明するうえで重要な意義を持つ。 2、慶応期の新規通商条約問題…本研究では、1866年の幕府・イタリア条約交渉を検討した。そして、1861年以降政情不安を理由に新規通商条約を拒否してきた幕府がイタリアと条約を締結した理由は、交渉を拒否するとイギリス公使パークスが介入し、当時朝廷が許可していなかった兵庫開港を条約に明記するよう幕府に強要する可能性があったためであることを解明した。本成果により、幕府の新規条約方針の変遷を明らかにすることができた。 3、明治初年の新規通商条約と条約改正問題…本研究では、1868~69年に行われた明治政府とスウェーデン=ノルウェー、スペイン、北ドイツ連邦、オーストリア=ハンガリーとの条約交渉を検討した。そして、明治政府が遊歩区域外に出た外国人への罰則を条約に明記すること、商人領事の禁止などを各国に要求し、「不平等条約」の微修正や条約運用環境の部分的改善に成功したことを解明した。 4、明治初年の日本・ハワイ条約交渉と条約改正問題…本研究では、1869~71年に行われた明治政府とハワイとの条約交渉を検討した。そして、従来片務的であった「不平等条約」の諸条項を双務化することを目指していた明治政府が、ハワイとの条約に通商に関する双務的最恵国待遇を明記し、条文の双務化への足がかりとすることに成功したことを解明した。3・4の成果は、法権・税権の問題を重視する従来の明治初年条約改正史研究に新たな視点を提示するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は交付申請書に記載した「研究の目的」に従って研究を進め、「9. 研究実績の概要」に記した1~4の成果を得た。さらに、成果1の内容は学会にて報告し、成果3・4は論文として学術雑誌に発表することができた(「13. 研究発表」を参照)。また、成果2の内容もすでに論文としてまとめて査読付きの学術雑誌に投稿しており、現在審査中である。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
「9. 研究実績の概要」に記した成果4から、明治政府が「不平等条約」の片務的な諸条項を双務化することを目指していたことが判明した。これは、1866年に日本人の海外渡航が解禁され、在外日本人の保護や権利保障が明治政府の課題となっていたためである。幕末維新期日本の国際関係についての研究を推進するには、この日本人の海外渡航問題を検討することが重要であると考えられる。そこで、今後は日本およびイギリスなど西洋諸国の史料を活用し、明治政府がいかに在外日本人の保護や管理に取り組んだかについて解明する。そして、本問題についての研究成果および本年度までに得られた研究成果を総括し、博士論文を作成する。
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