研究課題/領域番号 |
13J01259
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高橋 実道 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 惑星形成 / 原始惑星系円盤 / 線形解析 / 乱流 |
研究概要 |
近年の観測装置の発達によって、これまで見えていなかった原始惑星系円盤の高解像度の直接撮像が可能となった。その結果、原始惑星系円盤に大きなリング構造が形成されているとこが発見された。この観測は原始惑星系円盤の進化の過程をとらえたものであり、惑星系形成過程を解明する上で重要な手がかりになると考えられている。この観測結果を説明する理論モデルを構築することは、「研究目的」で述べた原始惑星系円盤の進化モデルを構築する上で、非常に重要である。 多くの場合、原始惑星系円盤のリング構造は惑星によって作られると考えられている。しかし、未だにこれらの構造を作った惑星は発見されていない。また、観測された構造を形成するには複数の惑星が必要という研究もあり、惑星によるリング構造形成は大きな問題がある。そこで本研究では「研究実施計画」にも記載した不安定性の解析を行い、惑星を必要としない、不安定モードの成長によるリング構造形成モデルについて研究を行った。 リングを形成する不安定性として、永年重力不安定性による構造形成に注目した。永年重力不安定性は散逸過程により長いタイムスケールで成長する重力不安定性である。永年重力不安定性を引き起こす散逸過程について、乱流粘性とガスーダスト間の摩擦の2つの場合を考えた。線形解析によってこれらの不安定性の成長するタイムスケールと最大成長波長を見積もった。その結果、どちらの不安定性でもリングが観測されている約100AUの位置では原始惑星系円盤の寿命である100万年以内に不安定が成長でき、最大成長波長は観測されたリングの幅程度である数十AUとなることが分かった。このように不安定モードの成長によって観測と矛盾のないリング構造形成を示したのは、本研究が世界で初めてである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
磁場の存在を考慮すると、原始惑星系円盤は磁気回転不安定性によって乱流状態にあると考えられている。25年度の研究で行った乱流粘性による不安定性の解析は、磁場を考慮した際の円盤の長期進化にとって重要となる。この研究では不安定となる条件と、不安定による円盤のリング構造形成を明らかにした。そのため、この研究によって「研究の目的」であった原始惑星系円盤の進化に対する磁場の寄与を考慮した解析的モデルの構築と、不安定性によるガス惑星形成過程の解明は進展したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究計画に記載したように、輻射を考慮した円盤の形成、進化のシミュレーションを行い、円盤の分裂によるガス惑星形成過程の研究を進める。これまでの研究から、円盤の分裂を議論する際には円盤へのガスの降着が重要となることが分かっている。そのため、様々なガス降着率でシミュレーションを行い、円盤が分裂する条件を調べる。シミュレーションから円盤の進化過程を詳細に調べ解析的に理解し、分裂の条件との関係を明らかにする。これらの結果をまとめて、原始惑星系円盤の形成、進化からガス惑星形成までの一貫した理論モデルを構築する。
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