研究概要 |
現在、世界初の重力波観測を目指し、KAGRA, Advanced LIGO, Advanced VIRGOといった重力波観測計画が動き出しており、重力波による天文学の幕開けが期待されている。重力波観測のメインターゲットになっているのは連星中性子星(NS-NS)、中性子星ブラックホール連星(NS-BH)、連星ブラックホール(BH-BH)といったコンパクト連星の合体である. コンパクト連星は重力波を放射してエネルギーを失いながら近づきあい、連星合体を起こす。この合体時および直前に強い重力波を放出することが理論的に予測されている。これらのイベントレートは、連星の進化計算によって見積もることができる。つまり、連星進化を主系列時からどのように進化していくかをモンテカルロシミュレーションで計算し、合体率を見積もるのである。コンパクト連星が合体するタイムスケールは、数億年のものから宇宙年齢以上のものまでと非常に多岐にわたっている。 そこで本研究では宇宙最初の星である初代星に着目した。初代星は現在の星よりも質量が大きく、コンパクトオブジェクトになりやすいと考えられている。初代星が形成されたのが宇宙初期だとしても、合体までの時間が宇宙年齢程度ならば、近傍にもまだ合体せずに生き残っているコンパクト連星が存在する可能性がある。最近の研究によって、初代星の典型的な質量は数十太陽質量ということが分かっている。よって、進化計算をもとに、10-100太陽質量の初代星の進化を考え、モンテカルロシミュレーションより、初代星起源の連星がどれだけコンパクト連星に成りうるのかについて研究を行った。本研究により、宇宙年齢以内に合体する初代星起源コンパクト連星のイベントレートおよび質量分布が計算された。その結果、初代星起源のBH-BHは現在の星起源のBH-BHと比べ同程度、もしくは小さいイベントレートを持ち、質量分布に関してはより大きい質量のものが多く分布の形状が異なることがわかった。これより、初代星の存在を重力波によってBH-BHの質量分布を調べることで間接的に示すことができることを示唆した。
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