研究課題
敗血症因子に晒された赤血球は,シア流下での形状変化が健康な赤血球に比べて小さく,これが敗血症における全身性炎症の引き金になりうる事が知られていたが,弾性等の物性の変化の理解は不足している.そこで細胞形状ゆらぎのスペクトル解析とマイクロ流体デバイスや光トラップ等を統合して個々の赤血球の物性変化を定量した.内毒素分子の糖鎖が長い程作用した赤血球の曲げ弾性係数は減少すると同時にシア弾性係数は増加する事,新生児赤血球は成人赤血球よりこの変化が顕著である事,新薬候補ペプチドがこの変化を抑える事,を解明した.特に生体界面の特徴として,赤血球の形状ゆらぎの理解に細胞骨格に由来する結合項が不可欠である事を立証できた.また,外部から添加され細胞膜表面に作用する内毒素分子が細胞質側の細胞骨格のシア弾性に影響を与えるという結果は,細胞膜に埋め込まれた膜貫通タンパク質への作用を示唆しており,メゾスケールの形状ゆらぎと分子スケールの現象の関連の理解を深めるものである.また,より動的で非平衡状態にある生体界面の振舞いの解明を目的として,アクチン・ミオシンタンパク質系(アクトミオシン)に駆動される再構成脂質膜界面の研究も並行してまとめた.アクトミオシンと脂質膜の結合に静電相互作用を援用することで,再構成したアクトミオシンの自発構造形成とカップルした人工脂質膜界面の動的変形が初めて観察されていたが,その解析や数理モデリングから界面変位の非熱的性質や曲率依存的な挙動が明らかになった.また,界面の非熱的ゆらぎの解析を深め,10秒スケールの時間相関をもつ有色ノイズ型の動的力生成が界面の非熱的変位に変換されていることを議論した.上記の主要な成果に加え,荷電性界面の粗視化MD計算や多細胞生物ヒドラの界面変形など,階層横断的に非平衡界面現象の解明に取り組み成果を挙げた.
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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