研究概要 |
外界の光情報は網膜において電気信号に変換され、外側膝状体へと伝わり、次に大脳皮質一次視覚野、更には高次の視覚領城へと伝わっていく。これまで私は、数ある視覚特徴の中でも特に方位(例 : 物体の輪郭線の傾き具合)に焦点を当てた研究を行ってきた。具体的には、麻酔非動化したネコの外側膝状体ニューロンから細胞外記録を行い、方位選択の定量評価及びそこに係わる神経基盤を明らかとすることを目的とした研究で、以下の結果が得られた。1)九割の外側膝状体ニューロンが方位選択性を示す、2)九割の外側膝状体ニューロンが楕円形受容野構造(ニューロンが「見ている」視野上の領域、その領域内への適刺激の入力によりニューロン活動が生じる)を示す、3)受容野構造のみでは方位選択性を説明出来ず方位選択性を変化させ得る応答修飾が存在する(Suematsu et al., 2012)。 本年度は、外側膝状体ニューロンの受容野構造形成メカニズムを探るべく、麻酔非動化したネコの外側膝状体膝状体ニューロン及びその投射元である網膜神経節細胞の活動を同時計測し、直接結合を形成しているニューロンペアでの受容野構造を比較するという研究を行った。その結果、1)網膜神経節細胞の受容野構造も楕円形をしている、2)網膜-外側膝状体の投射において受容野極性の異なるペア間でも直接結合が形成される、3)外側膝状体ニューロンの受容野構造は網膜神経節細胞のものよりも長く持続する、ということが明らかとなった。これらの結果は、網膜-外側膝状体の投射において多対一の収束入力が存在し、方位選択性は維持され、空間周波数(例 : 線の太さ)や時間周波数(例 : 光の点滅頻度)に対しての選択性がより強まる投射様式となっていることを示唆する(Suematsu et al., 2013)。 また現在、外側膝状体において見られる刺激特徴選択性が一次視覚野へとどのように受け継がれてゆくのかを明らかとする研究を進行中である。
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