研究実績の概要 |
外界の光情報は網膜において電気信号に変換され、外側膝状体へと伝わり、次に大脳皮質一次視覚野、更には高次の視覚領域へと伝わっていく。これまで私は、数ある視覚特徴の中でも特に方位(例:物体の輪郭線の傾き具合)に焦点を当てた研究を行ってきた。具体的には、麻酔非動化したネコの網膜・外側膝状体・大脳皮質一次視覚野の神経活動を細胞外記録法により記録し、方位選択性の定量評価、その神経基盤、領域間での方位情報の伝達様式を明らかとすることを目的とした研究を行い、以下の結果が得られた。1)外側膝状体においても有意な方位選択性が存在し、それはその神経細胞の楕円形受容野構造(神経細胞が「見ている」視野上の領域、その領域内への適刺激の入力により神経活動が生じる)が基盤となり、応答修飾が加わることでより顕著になっている、2)網膜においても同様に方位選択性が存在し、類似の選択性を持つ外側膝状体の神経細胞へと情報を送っている(Suematsu et al., 2012; Suematsu et al., 2013 )。
本年度は、外側膝状体において見られる刺激特徴選択性が大脳皮質一次視覚野へとどのように受け継がれてゆくのかを明らかとすることを目的として、麻酔非動化したネコの外側膝状体と大脳皮質一次視覚野の神経活動を同時記録し、その刺激特徴選択性の比較するという研究を行った。その結果外側膝状体から大脳皮質一次視覚野へと情報が送られる過程で、1)空間周波数選択性(「細かさ」に対しての選択性)は特に受け継がれず、積極的に選択性を強める処理がなされていること、2)最適方位そのものは受け継がれるが、選択性は強める処理がなされていることを明らかにした。
この研究成果を国内外3つの学会で発表し、論文を投稿準備中である。
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