研究課題/領域番号 |
13J01331
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
坪川 桂子 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ニシローランドゴリラ / 霊長類学 / 社会生態 / ガボン共和国 |
研究概要 |
本研究では、野生ニシローランドゴリラ(Gorilla gorila gorilla)の単独オスと群れがどのようなコミュニティを形成しているのか、遊動と音声という2つの観点を関連づけて検証する。長年の研究が蓄積されてきたマウンテンゴリラ(Gorilla beringei beringei)と比較して、ニシローランドゴリラの社会に関する知見は限られている。特に追跡の難しい単独オスについて、群れや他の単独オスとどのような社会関係を築いているのか、これまでほとんど明らかにされてこなかった。そこで本研究では、ニシローランドゴリラの単独オスと群れが、重複した遊動域に生息する他の群れや単独オスの音声を聴いた際にどのような遊動パターンを示すのか検証する。本研究を通して、ニシローランドゴリラの単独オスと群れの社会関係を描き出し、マウンテンゴリラの社会との種間変異を探るのが最終的な目的である。平成25年度には、主に現地調査を中心とした研究活動を実施した。平成25年8月下旬から平成26年2月中旬までの約半年間に渡りガボン共和国に渡航して、ムカラバ・ドゥドゥ国立公園においてニシローランドゴリラの行動観察を実施した。具体的には、単独オス1頭と2群の単雄複雌群を追跡し、GPSを使用して遊動情報を記録した。ドラミングなどの長距離音声を聴いて他個体の位置を把握した際に遊動パターンがいかに変化するのか、あるいは他の群れや単独オスと遭遇した際にどのような社会交渉を示すのかという点に着目して、ビデオカメラと野帳を用いて行動を記録した。これらのデータの詳細な分析は、平成26年度以降に実施する予定である。帰国後の平成26年3月には、生態人類学会第19回研究大会において、単独オスが他のゴリラと遭遇または音声を聴いた際に示した社会行動と遊動の変化について発表した。また、単独オスの遊動に関する基礎的な情報として、日遊動距離と採食生態の関連性に関する論文を英文学術誌に投稿する準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ガボン共和国ムカラバ・ドゥドゥ国立公園に滞在中は、電気の供給も無くインターネットへの接続も不可能であったため、論文執筆が困難であった。そのため、平成25年度に英文学術誌に投稿予定であった、ニシローランドゴリラの単独オスの日遊動距離に関する論文が、投稿に至っていない。また、ニシローランドゴリラの音声の音響分析についても遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
ニシローランドゴリラにおける群れと単独オスの社会関係に関して、平成25年度の野外調査で得た行動データを解析し、平成26年7月と8月にそれぞれ開催される日本霊長類学会と国際霊長類学会で研究成果を発表する。その後、ガボン共和国ムカラバ・ドゥドゥ国立公園において現地野外調査を実施し、平成25年度の調査内容を継続して遊動と社会交渉に関するデータを収集する。当初の研究計画に記載していた野外プレイバック実験については、音響解析が遅れているため実施が見込めない。その対応策として、群れや単独オスを追跡調査する時間を増やし、行動観察により重点を置いて、自然状態で他のゴリラの音声が聴こえた際の反応について観察事例を増やす予定である。
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