研究課題/領域番号 |
13J01362
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
田神 慶士 東京工業大学, 大学院理工学研究科(理学系), 特別研究員(DC2)
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キーワード | 絡み目 / Khovanovホモロジー / Rasmussen不変量 / 位相的量子場の理論 / 正絡み目 |
研究概要 |
本研究では、絡み目と呼ばれる、三次元空間に埋め込まれた閉じた紐の幾何的性質を調べ、分類することを目的としている。特に、以下の事柄について明らかにすることを目的としている。 1. KhovanovホモロジーとRasmussen不変量と呼ばれる絡み目の不変量と絡み目の正交差の関係 2. 正絡み目判定問題(与えられた絡み目が正結び目かどうか判定する問題) 3. Khovanovホモロジーと位相的量子場の理論の更なる関係平成25年度には以下の成果を得ることができた。 (1)絡み目を平面の図として描いたときに現れる交差がすべて"正"の交差であるような絡み目を正絡み目と呼ぶ。また、正でない交差を一つだけ持っ非正絡み目を概正絡み目という。平成25年度の研究では概正絡み目のKhovanovホモロジーの計算結果からRasmussen不変量を計算し、そこから概正絡み目の4次元種数を完全に決定した。(ここで4次元種数とはその絡み目を境界に持つ、4次元球内の曲面の種数の最小数のことである。)さらにこの結果により、正絡み目と概正絡み目の大きな違いとして絡み目の"等質性"があることがわかった。今後、正絡み目判定問題を解決していく上で、絡み目の等質性が大きくかかわることが予想される。 (2)以前の研究で位相的量子場の理論の拡張概念であるホモトピー的量子場の理論の代数的特徴づけを行った。平成25年度の研究では、その結果とKhovanovホモロジーの理論を結びつけることで、仮想絡み目(曲面上に描かれた絡み目の図に対応している対象)に対し、ホモロジー不変量を定義した。さらにそのホモロジー不変量はDye-Kauffman-Manturovらが代数的に定義したホモロジーと一致している。従って今回の結果はDye-Kauffman-Manturovらのホモロジー不変量の幾何的な解釈を与えたことになる。この不変量はMiyazawa多項式と呼ばれる仮想絡み面の不変量の圏化になっている強力な不変量である。今後、この不変量を用いて仮想絡み目の多くの幾何的性質を理解できると期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究で、正絡み目と概正絡み目の違いの記述、ホモトピー的量子場の理論を用いた仮想絡み目のホモロジー不変量の構築を行った。正絡み目と概正絡み目の違いとして与えた等質性についてはその判定法が無いため、完全に正絡み目と概正絡み目を区別したとは言えないものの、概ね順調に研究が進展している。仮想絡み目のホモロジー不変量については、まだ定義を与えただけの段階であり、応用について議論の余地を残している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究成果を踏まえて、正絡み目と概正絡み目の関係について詳細に記述する。特に等質性についてはまだ知られていないことが多いので、等質性からくる絡み目の性質を記述することが必要になる。絡み目の等質性とRasmussen不変量は相性が良いことが知られているので、Rasmussen不変量と似た性質をもつ結び目同境不変量も同様に等質性と良い関係を持つことが期待できる。そのような観点から等質性を持つ絡み目の性質を記述する。 平成25年度の研究で定義した仮想絡み目のホモロジー不変量について、まずは仮想絡み目の専門家と協力して、多くの具体例を計算してみて、どのような性質がわかるか列挙していく。
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