血小板の濃染顆粒内には、高濃度のADPやATPが蓄積されており、これらが開口放出されることが血液凝固の第一ステップである。しかしながら、どのようにしてこれらのヌクレオチドが濃染顆粒内に蓄積されるのか、そのメカニズムは明らかにされていなかった。当研究室は2008年に、SLC17A9が、小胞内にヌクレオチドの蓄積を担う、vesicular nucleotide transporter(VNUT)であることを明らかにした。そこで私は、VNUTこそが血小板の濃染顆粒内へのヌクレオチドの蓄積を担っているのではないかと考え、実証を試みた。①VNUTは血小板の濃染顆粒に発現していること、②VNUTは血小板において機能していること、③VNUTのmRNA量の低下に比例して、タンパク量、ATP輸送活性、ATP、ADP放出量が低下していることを見いだした。さらに、④VNUTの特異的阻害剤であるグリオキシレートにより、血小板及びMEG-01細胞のATP輸送及び放出は阻害された。以上のことから、VNUTは血小板の濃染顆粒に局在し、ヌクレオチドの蓄積を担っていると結論し、2014年にPhysiological Reportsに発表した。 さらに、血小板凝集を濁度の変化で評価する系を確立し、VNUT特異的阻害剤やVNUTノックアウトマウスを用いて、血小板凝集能について解析した。現在、その結果の論文化を進めている。 濃染顆粒には、細胞質内に豊富にあるATPではなく、ADPが高濃度に蓄積されている。新しい血液凝固の初発因子として注目されているポリリン酸が、ADP蓄積の機構を解く鍵分子であると考え、ポリリン酸の定量及びポリリン酸合成酵素の同定を試みた。
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