研究課題/領域番号 |
13J01370
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三本 嵩哲 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 水素化チタン粉末 / 純チタン / 固溶強化 / 酸素含有量 / 熱間押出加工 / 粉末冶金法 |
研究実績の概要 |
昨年度に開発した低コスト・高靭性純チタン(Ti)材をベースとして,酸化チタン(TiO2)粒子添加による酸素固溶強化の発現を実験/理論解析の両面から検証した.先ず実験的に,TiO2粒子の添加によって酸素のみを導入したH-XTiO2焼結押出加工材(水素化チタン(TiH2)粉末ベースX mass%TiO2粒子添加1273 K焼結1073 K押出加工材)を作製した.なお,ここではTiO2粒子添加による影響のみを個別に抽出・評価するため,昨年度の研究成果より,水素の影響が除去された純チタン押出加工材を作製可能な条件を設定した.押出加工材に対する微細構造解析と力学特性評価,および酸素固溶強化の数値計算に関するそれぞれの結果を既往研究成果と比較することで,TiO2粒子添加がTiH2粉末ベース純チタン材の高強靭化に及ぼす影響を明らかにした.調査の結果,ユビキタス軽元素の内,酸素のみを導入したH-XTiO2焼結押出加工材において,酸素供給源として添加したTiO2粒子は,脱水素・焼結処理工程を中心とした材料作製過程において,TiO2粒子/チタン母相間の局所的濃度勾配を駆動力とした固相拡散によって完全に分解・消失し,TiO2を構成していた酸素原子はその全てが押出加工材内部(チタン母相)に均質固溶した.酸素固溶に伴ってH-XTiO2焼結押出加工材には著しい強度増加が発現し,H-1.5TiO2焼結押出加工材(酸素含有量:2.77 at.%)においては,UTS: 1093 MPa,破断伸び: 24.2%なる優れた引張特性が確認された.また,実験より得られた0.2%YS増加量は,ラバッシュ限界を適用した固溶強化理論に基づく数値解析結果と極めて良い一致を示し,本材における強度増加が,転位-固溶酸素原子間の弾性的相互作用(溶質原子による転位の固着)に起因することが実験/理論解析の両面から明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標である「TiO2粒子由来の酸素による固溶強化メカニズムの解明」に成功し,さらに作製した材料において「数値解析に基づく強化量の予測・制御」が可能なことも実験/理論の両面から実証した.以上の成果から,本年度の達成度を「②おおむね順調に進展している。」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに得られた知見・要素技術を統合し,最終目標とする力学特性(最大引張強さ>1100 MPa,破断伸び>20%)を備えた『完全レアメタルフリー・低コスト・高強靭性チタン材』を開発する.また,必要に応じて材料作製条件の最終微調整を行う.開発材に対しては,組織構造解析ならびに各種力学特性評価を実施し,その強化メカニズムを明らかにする.
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