研究課題
本研究では、ワカレオタマボヤを用いて、卵巣特異的に発現する遺伝子に対するスクリーニングを行い、動植軸形成に関わる因子を探し出すことを行った。そこで本年度は①新規スクリーニング手法としてのDNAi法の確立②DNAiスクリーニングによる動植軸の乱れの探索を行った。①まず新規スクリーニング手法としてDNAi法の確立を行った。これまでにRNAi法を用いた遺伝子機能阻害法を確立していた。しかしながらRNAiを用いた方法では、それぞれの遺伝子に対するdsRNAを合成する必要があり、ワカレオタマボヤの卵巣内で発現している遺伝子を網羅的に解析することは困難であった。本年度の研究で、このRNAi法に変わる新規の機能阻害法を確立した。ワカレオタマボヤにおいてBrachyury遺伝子に対するPCR断片を作成、顕微注入を行ったところRNAiと同様に配列特異的にBrachyury遺伝子のmRNAが減少し、尾部の短縮した表現型が得られた。すなわちワカレオタマボヤにおいてPCR断片を注入することにより、注入した断片の配列をもとに配列特異的な機能阻害が引き起こされることを明らかにした。またこの機能阻害はmRNAの分解及び、転写の阻害を介して行われている様であった。このDNAi法ではPCR断片を注入するだけで機能阻害を引き起こすことが可能であり従来のRNAi法に比べ容易に機能解析が可能となった。この現象を多細胞動物における初めてのDNAiの例として報告した。②次にこのDNAi法を用いたスクリーニングにより動植軸の乱れを示す表現型の探索を行った。これまでに200個のプール、1000個の遺伝子に対して機能阻害を行い、12個のプールで異常を示す表現型が得られた。この内、2個のプールではβカテニン阻害胚様の表現型を示した。上記の様に本年度は、動植軸形成に関わる因子を見つける為のDNAiスクリーニングを開始した。
2: おおむね順調に進展している
当初計画していなかったDNAi法という新規機能阻害法を確立することができた。またこれまでに、この手法を用いて1000個の遺伝子に対してスクリーニングを行い、12個の異常を示す表現型を見つけた。最終的には3000個の遺伝子をめどにスクリーニングを行う予定であり、3000個はあと4ヶ月程度で終わらせることが可能である。したがって本年度の研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
今年度行ったスクリーニングを、あと4ヶ月ほど続けることで当初計画している3000遺伝子のスクリーニングが終了する。その後はこれまでに得られた異常を示す表現型に対して、アルカリフォスファターゼ染色等を用いて解析することで動植軸の乱れを示す表現型を同定し、動植軸形成に関わる因子の同定を行う。
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Proceedings of the Royal Society of London B
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