本研究ではワカレオタマボヤを用いて母性因子の網羅的な遺伝子スクリーニングを行うことを行った。 それに先立って昨年度までに確立したDNAi法が母性因子の機能阻害に有効であるかどうかの検証を行った。この為に母性タンパク質として知られるβ-cateninのPCR産物を卵巣内顕微注入法を用いて取り込ませた。この結果、細胞接着および内胚葉の分化に異常が見られた。このことから、ワカレオタマボヤにおいて卵巣内顕微注入法を用いることで確かに母性因子の機能阻害が可能であることが示された。 次に当初の計画通りスクリーニングを進めた。この結果、メス特異的な遺伝子ライブラリーの3000クローン(56.9%)の遺伝子の機能解析を行い、7個の原因遺伝子の特定を行った。 得られた7個の遺伝子は初期胚発生期に①細胞分裂、②細胞接着、③タンパク質の核内輸送、④遺伝子の複製、修復、組み換えに関わるものであった。 以上の結果から、ワカレオタマボヤにおいて卵巣内顕微注入法を用いるDNAiスクリーニングによって、これまで脊索動物では困難であった母性因子のスクリーニングが有効であることが示された。これらの結果をもとに現在論文投稿の準備を行っている。
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