研究実績の概要 |
1. α-シアノアミンを用いたシアノ化反応の開発 申請者は、嵩高い脂肪族アミンのα位水素が効果的なヒドリド源として作用することを見出していた。本研究を基に、アミンα位にシアノ基を導入したα-シアノアミンを合成し、これを利用したシアノ化反応へと展開した。反応基質としてアルデヒド由来のアセタールならびにオルトエステルを用いると、非常に高い化学収率にて対応するシアノ化体を得ることができた。反応機構の解明を目指しNMR実験を行った結果、反応中間体としてオキソカルベニウムカチオンが生成していることを明らかにした。このように、嵩高いアミン誘導体を新規反応剤として利用したことで、有用な化学変換を達成した。
2. アリールGrignard試薬を直接求核剤としたケトンの不斉1,2-付加反応の開発 不斉配位子としてビナフトール誘導体を用いて、アリールGrignard試薬とケトンから光学活性第三級アルコール合成を行った。嵩高い置換基を有するビナフトール誘導体を合成したことで、高い立体選択性を獲得することに成功した。本反応は、アリールGrignard試薬を直接求核剤とした初の不斉反応であり、単純ケトンとGrignard試薬という入手容易な原料から、非常に簡便かつ迅速に多様な光学活性第三級アルコールを合成することができる。また、反応機構解明に向けた検討から、ビナフトールのジマグネシウム塩が不斉誘起を担っていると結論付けた。さらに、ケトンに対して50 mol %の不斉配位子においても、高い立体選択性を維持できることを明らかにした。Grignard試薬は非常に反応性が高く、不斉反応に応用するためには100 mol %以上の配位子が必要とされていたため、本結果は非常に意義深いものと考えている。今後、更なるメカニズムの解明とともに、配位子量の更なる低減化、生物活性物質合成への応用が期待できる。
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