研究課題/領域番号 |
13J01427
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松尾 功二 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 宇宙測地学 / 重力場変動 / 雪氷学 / 極域科学 |
研究概要 |
本年度は、宇宙測地データを用いた極域氷床変動に関する研究を行った。まずは、衛星レーザー測距(SLR)観測による地球の低次重力場変動の導出と、極域氷床変動研究への適用に関する研究である。地球を周回する人工衛星は地球重力場の変化の影響を受けて、その軌道を僅かに変化させる。その関係は万有引力の法則とエネルギー保存の法則に従うため、衛星軌道の変化を精密に計測することで逆算的に地球重力場の変化を再現することができる。SLR軌道解析で導かれる地球重力場変動は空間解像度が低いものの、約30年にも及ぶ長期間のデータが利用可能である。我々は、得られた重力変動データをグリーンランド氷床の質量変動観測に適用した。比較的高い精度が確認された1991年から2011年の約20年間のデータを解析することで、グリーンランド氷床が2000年以降、近年の気侯変動に伴い加速的に融解・消耗していることを突き止めた。本成果は、査読付き国際誌「Geophysical Research Letters」にて投稿され、査読者からの高い評価を受けて、受理・印刷されるに至った。その後、我々は1980年代のSLRデータの解析に着手し、得られた重力解の精度検証を行った。その結果、次数2の項(力学的扁平項および極移動項)は全ての期間で高い精度が確認され、次数4次までの項は1993年以降で精度が高いことが確認された。本成果は、国際シンポジウムにて発表され、査読無し論文集「Proceedings of 18^<th> International Workshop on Laser Ranging」に掲載された。これらの研究と平行して、重力衛星GRACEデータに基づくアジア高山域の氷河質量収支の再評価に関する研究も行った。本成果は、査読付き国際誌「雪氷」にて解説論文として投稿され、受理・印刷された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
現在衛星高度データの解析を進めており、グリーンランドと南極氷床の経年的な氷厚変動の推定を行なっている。進行状況は良好で、現在学術論文としてのまとめる作業を行っている。平成25年度の成果により、高い精度のSLR低次重力場データが得られた。このデータを活用し、南極氷床の質量収支の推定や、海水準変動の検出に関するを行いたいと考えている。
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