本年度は主に、衛星高度データを用いた極域氷床の消長に関する研究を行った。アメリカ航空宇宙局(NASA)が2003年1月に打ち上げたレーザー高度衛星ICESatが計測した表面高度データを用いることで、グリーンランドの加速的な氷厚薄化のシグナルを捉えた。その結果、2003-2009年の期間では、グリーンランド西部と北部で、氷厚の加速的な薄化傾向、南東部で減速的な薄化傾向にあることを明らかにした。現地の気象データを用いて、これらの傾向の要因を考察したところ、西部と北部の加速的な薄化傾向は、気温の昇温に伴う氷床融解の加速を反映していることが分かった。また、南東部では、氷床融解に加え、2007-2009年にかけて降雪量が増加していたため、減速的な薄化傾向であったことが明らかになった。本研究の成果は、国内学会や国際学会にて発表された。また、2014年7-8月に札幌にて行われた国際学会Asia Oceania Geoscience Society 11th meetingにて招待講演として発表された。学術論文に関しては、現在執筆中である。この研究に並行して、重力衛星GRACEによる重力時間変化データを用いた、2006年および2007年千島列島沖地震に関連した地震後重力時間変化に関する研究を行った。地震後重力変化が確認されたのは、2004年スマトラ・アンダマン地震(Mw9.2)、2010年チリ・マウレ地震(Mw8.8)、2011年東北地方太平洋沖地震(Mw9.0)に続き、第4例目であるが、他の地震と比べ、異なる特徴が見られる。それは、地震の規模が他のケースよりも圧倒的に小さいにもかかわらず、2011年東北地方太平洋沖地震に匹敵するほどの大きな地震後重力変化が見られる点である。本研究で発見した現象を国際学会にて発表し、現在メカニズムの解明に向けて調査を行っている。
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