研究課題/領域番号 |
13J01428
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐々 文洋 筑波大学, 生命環境系, 特別研究員(PD)
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キーワード | 微生物 / 培養 / 単離 / スクリーンニング / ゲル / マイクロマシンニング / MEMS / アレイ |
研究概要 |
従来の新規有用微生物探索を目的とした環境サンプルのスクリーニング研究の多くは、シャーレやウェルプレートを用いて、単離・培養・分析を行ってきた。しかし、この方法では同時に処理できる培養数は数百程度に限られる。 そこで本研究では、マイクロマシンニング技術を用いることで、1プレートあたり1万単位の独立した長期微生物培養および単菌レベルの微量な代謝物の検出の実現を目的としたアレイ型培養デバイスを作製した。 デバイスは、円形のガラス基板(φ3 inch, 厚さ500 ㎛)を基板とし、フォトリソグラフィーによって形成された80㎛角の孔が約10万個アレイ状に並んだ樹脂層を持つ。樹脂層の上面は超撥水処理(接触角130°)が施されており、各孔には独立にLB寒天培地が充填されている。ゲルの持つ保水性によりわずか5nLでありながら、培地の蒸発を抑え長時間の培養を可能とする。 デバイス評価のため、それぞれ緑と赤の蛍光タンパク質(eGFPおよびDsRed)を発現させ識別した二種類の大腸菌(E. coli : K-12)の混合懸濁液を用い、18時間培養・経時観察したところ、単一の菌がゲル孔内で増殖していく様子が観察できた(図2)。また隣接するゲル孔間での菌の移動は観察されなかった。デバイス全体では菌が増殖したゲル孔は25%程度であり、植菌時の比率と同等であった。以上より、本デバイスで大腸菌の数万オーダーの単離培養および、12時間以上の培養が可能であることが確認された。以上、により高密度単離培養ストレージが完成した。 本ストレージデバイスは当初計画していた液滴によるアレイを試行錯誤の上で改良し、液滴を液体ではなくゲル培地とすることで、単離培養密度を当初目標の1平方センチメートル当たりに33個から3096個することに成功、当初目標の約100倍の高密度化を実現している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上述のように、当初計画していた液滴によるアレイを試行錯誤の上で大幅に改良し、液滴を液体ではなくゲル培地とすることで、単離培養密度を当初目標の1平方センチメートル当たりに33個から3096個することに成功、当初目標の約100倍の高密度化を実現している。この培地微小化により培地に蓄積する代謝物濃度も桁違いに上昇しており、当初必要と考えていた、培地濃縮機構を別途開発する必要がなくなった。以上より計画以上の進展を得た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、培養によって得られた画像より、微生物の増殖特性等スクリーンニングに関する情報を取得するための解析ソフトウェアを作製し、生物学的な分析を行う。また、望ましい特性を持った菌の増殖するチャンバーを選択的にピックアップし、大きな系で培養するための装置を開発し、本デバイスのスクリーンニングデバイスとしての能力を示す予定である。なおこれらの予定はバイオMEMSの世界的権威、米MITクラバスFヤンセン教授のラボに滞在し実施する。
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