研究実績の概要 |
従来の新規有用微生物探索を目的とした環境サンプルのスクリーニング研究の多くは、シャーレやウェルプレートを用いて、単離・培養・分析を行ってきた。しかし、この方法では同時に処理できる培養数は数百程度に限られる。そこで本研究では、マイクロマシンニング技術を用いることで、1プレートあたり1万単位の独立した長期微生物培養および単菌レベルの微量な代謝物の検出の実現を目的としたアレイ型培養デバイスを作製した。デバイスは、円形のガラス基板(φ3 inch,厚さ500 μm)を基板とし、フォトリソグラフィーによって形成された80 μm角の孔が約10万個アレイ状に並んだ樹脂層を持つ。脂層の上面は超撥水処理(接触角130°)が施されており、各孔には独立にLB寒天培地が充填されている。密度を適切に調整した菌懸濁液をデバイスに導入することにより、各ゲルにそれぞれ0個から数個程度の菌が播種され、確率的な一括した単離が可能となる。ゲルの持つ保水性によりわずか5 nLでありながら、培地の蒸発を抑え長時間の培養が可能となる。 最終年度では、作製したアレイ型培養デバイスをリアルタイムで培養観察可能な顕微鏡-培養環境定常化装置を開発し、タイムラプス動画像の取得に成功した。また、得られた動画像からグロースカーブおよびそこから得られる1チャンバーごとの成長情を抽出するためのコンピュータ画像解析を開発し1000単離菌体規模の常食と気勢を一括して評価することに成功した。さらに菌が増殖した特定のゲルに対し、実体顕微鏡、およびニードルを固定した電動ステージによる、半自動での1ゲルのピックアップに成功した。本ストレージデバイスは当初計画していた液滴によるアレイを試行錯誤の上で改良し、液滴を液体ではなくゲル培地とすることで、単離培養密度を当初目標の1平方センチメートル当たりに33個から3096個することに成功、当初目標の約100倍の高密度化を実現している。
|