研究課題/領域番号 |
13J01442
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岡川 朋弘 北海道大学, 大学院獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | PD-1 / LAG-3 / 免疫抑制受容体 / キメラ抗体 / モノクローナル抗体 / ウシ白血病ウイルス / 難治性疾病 / T細胞 |
研究概要 |
本研究では、ウシの免疫抑制受容体programmed death-1 (PD-1)やlymphocyte activation gene-3 (LAG-3)に対する阻害薬(キメラ抗体)を開発し、ウシ白血病ウイルス感染症をはじめとした難治性疾病に対する新規制御法を樹立することを目的としている。本年度は、抗ウシPD-1ラット-ウシキメラ抗体の安定発現細胞株を作製するとともに、免疫再活性化効果を示す抗ウシLAG-3ラットモノクローナル抗体を樹立した。 まず、当研究室で樹立した抗ウシPD-1ラットモノクローナル抗体の可変領域遺伝子を同定し、ウシIgG1の定常領域遺伝子と組み合わせ、抗ウシPD-1ラット-ウシキメラ抗体の発現プラスミドを作製した。この発現プラスミドをCHO DG44細胞へ導入した後、抗生物質添加培養により安定発現細胞を選抜し、ELISA法によりキメラ抗体の産生が高い細胞を10種類決定した。さらにこの10種類について限界希釈法によるクローニングを行い、高い産生量のクローンを選抜した。 PD-1阻害と併用を目的とし、ウシLAG-3に対するモノクローナル抗体を作製した。ウシLAG-3ペプチドを免疫したラットからリンパ球を回収し、マウスSP2細胞と細胞融合を行い、ハイブリドーマを作製した。ハイブリドーマの培養上清をELISA法とフローサイトメトリー法によりスクリーニングし、最終的に8クローンの抗ウシLAG-3ラットモノクローナル抗体を樹立した。本抗体はすべて、LAG-3に特異的に結合し、T細胞の機能(IFN-gamma産生)を活性化したことから、ウシの難治性疾病に対する免疫応答の制御を目的に利用できると考えられる。 本年度はこの他に、本制御法の適応範囲を広げるため、牛のヨーネ病における免疫抑制受容体の機能を解析し、LAG-3がヨーネ病の新規治療標的となる可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の年度計画であったキメラ抗体やモノクローナル抗体の作製だけに留まらず, 年度計画にはなかったヲーネ病についても免疫学な解析を行い, 多くの研究成果を得た。課題研究の成果については今後2年間の研究次第であるが, 現在までのところは順調に研究が進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度以降は、作製したキメラ抗体やモノクローナル抗体について、ウシ白血病ウイルス感染牛を用いた臨床試験を行う。これまでに試験管内(in vitro)の解析で確認された免疫再活性化効果が、ウシの生体内(in vivo)でも認められるかを明らかにする。臨床試験を実施するにあたり、大量のキメラ抗体(目標量 : 成牛1頭あたり2g)が必要になるため、今年度開発したキメラ抗体発現細胞に対して遺伝子増幅処理を行い、目標の産生量に達する発現細胞株を樹立する。また当初の研究計画にはなかったが、この研究と併行して、牛の難治性疾病であるヨーネ病における免疫抑制受容体の発現解析および機能解析も実施し、本制御法が適応可能な他の疾病を検討する。
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