研究課題
本研究では、ウシの免疫抑制受容体PD-1やLAG-3に対する分子標的薬を開発し、ウシ白血病ウイルス(BLV)感染症やヨーネ病をはじめとした難治性疾病に対する新規制御法を樹立することを目的としている。まず、昨年度までに樹立した発現細胞株を用いて、抗ウシPD-1治療用抗体および抗ウシLAG-3治療用抗体の大量生産を試みた。この結果、14 mgの抗PD-1抗体を産生させることに成功した。また、抗LAG-3抗体についても大量生産を現在進めている。次に、作製した抗PD-1治療用抗体の機能を評価した。まず、この治療用抗体のPD-1に対する結合親和性は、基にした抗PD-1ラット抗体と同等であることがわかった。また、この治療用抗体はPD-1とリガンドであるPD-L1の結合を阻害するブロック抗体の機能を示した。さらに、BLV感染牛を用いて抗ウシPD-1治療用抗体の臨床試験を実施した。抗PD-1治療用抗体を感染牛に投与し、その後の経過を観察した。抗体投与後、試験牛には特筆すべき臨床症状は認められなかった。また、投与した抗体は少なくとも投与後28日まで血清中から検出され、長い血中半減期を有することが示唆された。そして、抗PD-1抗体の投与によりBLV特異的CD4+ T細胞応答が活性化され、抗ウイルス効果が認められた。このように、抗ウシPD-1治療用抗体がBLV感染症の発症遅延に有効な治療薬となりうることが示唆された。また、本年度はこの他に、本制御法の適応範囲を広げるため、牛のアナプラズマ病における免疫抑制受容体の発現動態と機能を解析し、アナプラズマ病におけるT細胞の疲弊化にPD-1とLAG-3の発現上昇が関与することを示した。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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