本研究課題に取り組む上での目的は、第一に、高度技能移民政策の個別の事例として、NHSなどの公共セクターで働く移民の雇用政策について検討することであり、第二に、高度技能移民という新たな潮流の移民の受け入れが福祉国家にもたらす意義を明らかにすることであり、第三に、高度技能移民という専門性を有するヒトの移動がもたらす、国境を越えた専門性のコントロールというイシューから、国境を越える専門性の管理に伴う問題について考察することであった。 上記の目的の下、平成26年度は前年度の研究で扱うことができなかった第三の目的に取り組むとともに、前年度の研究活動のなかで得られた資料やヒアリングの内容に基づく研究発表を行い、本研究課題の全体的なテーマと密接にかかわる論文として、博士論文の執筆と提出を行った。 第三の目的については、26年度に行った研究活動のなかで、NHSにおける外国人医師の受け入れを事例に、出入国管理と専門性にかかわる資格制度などの管理、ならびに受け入れた後の管理が重要であることが考察された。受け入れた後の管理としては、国内の医師を対象とした医師会の存在だけでなく、外国人医師の場合には彼らを対象とした医師会が、医師の専門性から彼らのイギリス社会における統合政策まで、幅広く担う役割を果たしていた。こうした点について、日本公共政策学会で行った口頭発表ならびに博士論文のなかで言及することで、平成26年度の研究目的に取り組むことができた。当初想定していたよりも、より多くのアクターがかかわるアリーナにおいて、専門性の国際移動が可能であることが窺われることから、これについては、今後さらなる検討が必要であると考える。
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