研究課題/領域番号 |
13J01491
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西宮 攻 北海道大学, 大学院水産科学院, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 水産学 / 生理学 / ヌタウナギ / ビテロジェニン / エストロジェン / ホルモン受容体 |
研究概要 |
最も原始的な脊椎動物であるヌタウナギ類の卵黄形成機構を理解することは、同種の繁殖生理を明らかにし、資源管理の方策を検討する上で重要であるだけでなく、卵生脊椎動物における卵黄形成機構の成立と進化を解明する上でも非常に重要である。一般に、卵生脊椎動物の卵は、多量の卵黄を蓄積することを特徴とする。卵黄を構成する物質は、主にビテロジェニン(Vtg)と呼ばれる雌特異血清蛋白に由来する。そして、Vtgは、雌性ホルモンであるestradiol-17β(E2)の作用により肝臓で合成される。しかし、先行研究においてヌタウナギ(Eptatretus burgeri)では、Vtg遺伝子の発現は一般的な同遺伝子発現機構とは大きく異なる可能性が示された。そこで本研究では、ヌタウナギにおける卵黄タンパク質の前駆体であるVtg遺伝子の転写調節機構の解明を目的とした。 本年度は、一般的な卵生脊椎動物で適用されるVtgの合成誘導機構モデルとの相違点を明らかにするために、E2作用において重要な調節因子であるエストロジェン受容体(ER)およびVtgプロモーターに着目し、2種ERおよび2種Vtgプロモーターの機能についてレポーターアッセイ系を用いて解析した。その結果、ヌタウナギの2種ERはともに、一般的な脊椎動物ERと同様、エストロジェン特異的なリガンド選択性、さらにはリガンド依存的な標的遺伝子の転写活性化能を有することが明らかになった。また、2種ERのリガンド親和性は、2種間で差異が確認されたものの、ともにERαに類似していることが示唆された。また、ヌタウナギ2種Vtgプロモーターは、他の卵生脊椎動物におけるVtgプロモーターと同様にERとE2による転写促進を受けることが明らかになるとともに、両者の活性には差異がある可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に行う予定であった、2種ERおよび2種Vtgプロモーターの機能解析についてはおおむね終了している。また、Vtgプロモーターの機能解析についての追加実験や次年度に行う予定のヌタウナギの初代肝細胞培養系を用いたin vitro実験や次世代シーケンサーを用いた解析については、既に準備を始めていることから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本種の2種Vtgプロモーターおよび2種ERの機能の差異についてより詳細な知見を得るために、種々のステロイドやERアゴニストならびにアンタゴニストの存在下で2種ERによる2種Vtgプロモーターの転写活性を解析する。また、ERE様配列ならびに他の転写関連配列の欠損により起こる転写活性の変化を、両プロモーター間の相違に注目して解析し比較する。また、本種の初代肝細胞培養系を用いたin vitro実験において、Vtg合成を促すホルモンの網羅的解析も行う予定である。さらに、本種Vtg合成に関与する因子を網羅的に解析するために、次世代シーケンサー(HiSeq ; illumina社)を用いて、成熟雌の肝臓で特異的に発現する遺伝子を明らかにする。それらの遺伝子の中で、特に転写因子に着目し、その機能についてレポーターアッセイの実験系を用いて調べる予定である。
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