研究概要 |
本研究課題「拮抗する筋群の随意的同時収縮を活用した筋力トレーニングに関する生理学的研究」は, 外的負荷を用いない筋力トレーニング方法の有効性を検証すること, また, その特徴を解明することを目指している. 平成25年度においては, まず, 上肢における随意同時収縮トレーニングの効果を明らかにすることを目的として, 一般成人を対象に, 4~12週間の最大随意同時収縮トレーニングに伴う神経・筋の適応を検証した. 被検者は, 「肘屈曲筋群・伸展筋群における最大努力の同時収縮を4秒間実施・4秒間弛緩の10回反復」を1セットとし, 1セッションにつき5セット, 週に3セッション行った. その結果, 最大随意同時収縮トレーニングは, 1)静的および動的筋力を改善させる, 2)筋量を増加させる, および3)最大筋力発揮時における不随意的拮抗筋活動は増加させないことが明らかとなった. また, 競技特性上, 同時収縮を頻繁にかつ長期的に実施しているボディビルダーを対象とし, 一般成人との比較を行った結果, 1)最大随意同時収縮実施時において, ボディビルダーは一般成人よりも高いレベルで筋を活動させることができること, および2)最大筋力発揮時における不随意的拮抗筋活動には群間で差がないことが明らかとなった. 以上の結果から, 上肢を対象とした最大随意同時収縮トレーニングは, 外的負荷を用いずに筋力および筋量を増加させる有効なトレーニング手段の一つとして成立し, 不随意的な拮抗筋活動は増加させないことが示唆された.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究過程において, 下肢および腹部筋群を対象とし, 最大随意同時収縮中の筋活動水準を測定した結果, 下肢においては拮抗筋間の筋力差が, 腹部においては体幹部筋群の複雑な構造が影響し, 筋によっては筋力・筋量の増加が期待できる筋活動水準(トレーニング強度)に到達しないことが示唆された, 平成26年度においては, これらの部位における実際のトレーニング効果を検証するとともに, 課題実施中の筋活動水準を制限する要因を明らかにすることを目的とする.
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