カンボジアの近代教育の歴史の再構築を目的としているが、本年度はとくに初等教育課程の分析を中心に行った。具体的には平成25年度に2回、カンボジアでのフィールドワークを実施してあり、教育省でこれまでの初等教育課程のカリキュラムや教科書を入手、地域の学校の歴史を記録したノートの入手、教師および元教師のライフヒストリーの聞き取りを実施してきた。これらの一次資料を日本語に翻訳し、分析する作業を行った。本研究は、これまで政策の分析や二次資料の分析が中心であったカンボジアの教育史研究において、地方の学校、行政における聞き取り調査や、学校に残された文書資料を中心により実情に迫った分析を行うことが独創的な点である。そのため、一次資料の収集、その文書の翻訳や聞き取ったデータを聞き起こして翻訳する作業によって見出さされる意味がもっとも重要な情報となる。 また、方法論や分析手法を深めるために人類学の文献、比較教育学の文献、教育史、カンボジアの地域研究に関する文献をレビューを行った。 2014年7月5日には京都大学で行われた第8回日本カンボジア研究会に出席し、カンボジアの歴史、政治に関する最新の研究から、カンボジアの歴史と現在との関連性に関して新たな視座を得ることができた。 2014年7月には名古屋大学で行われた日本比較教育学会第50回大会において、成果の一部を「ポル・ポト時代後のカンボジアにおける小学校教育の質的-考察-コンダール州の事例から-」として発表した。本学会発表において、データの詳細さに関してよい評価を得ることができた。考察に関してはより一層深めることが重要であると認識することができた。
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