研究課題/領域番号 |
13J01523
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
高口 僚太朗 筑波大学, 大学院人文社会科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 小児I型糖尿病 / ライフストーリー / 医師-患者関係 / 小児慢性疾患 / 患者家族 / ライフステージ / 病いの語り / 現象学的社会学 |
研究概要 |
採用1年目であるにもかかわらず、充実した研究成果を挙げた。とくに、研究テーマである小児I型糖尿病を直接扱った学会報告はもちろん、小児医療全般における社会科学的貢献に努めたといえる。なかでも、小児I型糖尿病同様、小児慢性疾患の当事者を対象とした領域において、専門家や関係者のみならず第三者らからの評価が得られたことは、今後、研究を遂行していくうえで極めて重要な変化であったと実感している。具体的には、①小児I型糖尿病、②ダウン症や自閉症、③発達障害の3つである。これらに共通することは、第一に、子ども期発症であること、第二に、疾患を原因とする死亡率が極めて低いこと、そのため、第三に、成長することは日常生活を営んでゆくための独自のスキルを身体化させていく過程、の3つである。小児I型糖尿病にくわえて、ダウン症や自閉症といつた他の慢性疾患を患っている当事者と接することができたのは、病いの経験の語りを聞き取る際に大きく作用した。研究成果においてもこれらは反映されている。 国外での口頭発表として、韓国での発表が挙げられる。報告内容は、ダウン症や発達障害の当事者の高等部教育以降のライフストーリーを粘り強く聴き取ることにくわえ、日本との制度比較をおこなった。具体的には、2007年が日本と韓国とでともに特別支援教育のあり方をめぐって法改正がなされた年であることに着眼した。そのうえで、その後の制度改変や当事者の営みを比較した。韓国での報告を契機に、教育学の研究者との共同研究が立ち上がったことも今年度の収穫といえる。これまでも、小児I型糖尿病というテーマから、医療者や医学関係者との議論には恵まれていたが、これに教育学系の研究者との関係性ができたことで、学際的な小児医療研究へ近づけたのではないかと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究課題においても、また関連領域においても、優れた研究成果を挙げている。学術的成果にくわえて、アウトリーチ活動においても幅広く貢献した。具体的には、司会を3回おこなった。2つの委員会で委員を継続もしている。さらに、2013年7月23日の熊本日日新聞8月26日の朝日新聞、より取材もされており、社会貢献にも努めた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続き、研究調査を継続するとともに、学術雑誌への論文投稿と関連機関誌への投稿を予定している。 まず、研究調査においては、香川県、青森県、鳥取県に居住する小児I型糖尿病者への聞き取りを実施する。なおこれらの当事者からは、すでに調査協力を得ている。また、福岡県に居住する男性で、中年期にI型糖尿病を発症した当事者への聞き取りを開始する。さらに、4年間継続している当事者への聞き取りを継続するとともに、この当事者を一つの事例とした論文投稿を予定している。 依頼講演を平成25年度は多くいただき、平成26年度も小児医療の幅広い分野で報告させていただく。
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