研究課題/領域番号 |
13J01523
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
高口 僚太朗 筑波大学, 人文社会科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 慢性疾患 / 1型糖尿病 / 子ども / ライフストーリー / 経験の語り / ライフステージ / 質的データ分析 / 現象学的社会学 |
研究実績の概要 |
採用2年目も、充実した研究成果を挙げた。とくに、研究テーマである小児Ⅰ型糖尿病を直接扱った学会報告(査読あり)はもちろん、医療全般にわたる社会学的貢献に努めたといえる。昨年度同様、小児慢性疾患の当事者を対象とした領域において、専門家や関係者のみならず第三者らからの評価が得られている。 また今年度は、方法論的にも社会学に貢献できたといえる。その最大は、教育学者や医学者、教師や医師とのかかわりあいのなかでも社会学の研究者であることが広く周知された点にある。実際、医学部(内分泌代謝・糖尿病内科学)の共同研究者としてチーム医療に加わることができたことや、教育学者主体の学会や研究会でも同様の実績が得られたことである。 国外での口頭発表として、韓国での発表が挙げられる。報告内容は、ダウン症や発達障害の当事者の高等部教育以降のライフストーリーを粘り強く聴き取ることにくわえ、日本との制度比較をおこなった。具体的には、2007年が日本と韓国とでともに特別支援教育のあり方をめぐって法改正がなされた年であることに着眼した。そのうえで、その後の制度改変や当事者の営みを比較した。韓国での報告を契機に、教育学の研究者との共同研究が立ち上がり継続できたことは昨年同様の収穫といえる。これまでも、小児Ⅰ型糖尿病というテーマから、医療者や医学関係者との議論には恵まれていたが、今年度は教育学系の研究者との関係性がより良い方向へ展開したことを契機に、社会学の方法論が広くアピールできたと考える。 社会学の方法論がうまく機能した研究成果として、(1)『平和文化研究』への投稿論文が挙げられる。この論文は、小林多寿子〈一橋大学〉のライフコース論、経験社会学の手法をベースに構成した。(2)さらに、フィンランドの糖尿病者のQOLの事例分析をおこなった報告(Septenber2014)も今年度の実績として挙げられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究課題においても、関連領域においても、優れた研究成果である。 査読論文1、査読なし論文3、国際会議での報告1、など成果は具体的な数字として示される。また、昨年から継続している各委員としての実績も豊富である。 昨年度との比較において、今年度は医学部での研究報告、共同研究が挙げられる。なかでも、内分泌代謝学や小児科学の領域において顕著である。とりわけ、ヘルシンキ大学(フィンランド)での実態調査を基礎に構成された八ツ賀秀一との研究報告は重要である。くわえて、筑波大学医学群内分泌代謝・糖尿病学教室の共同研究者として、ひろく社会学の知見をアピールできたことも重要である。グローバルな視点にたった研究実績である。 執筆論文においては、経験社会学の立場から、廣松渉(哲学者・東大名誉教授)と同窓生を対象としたライフストーリー研究が挙げられる。 以上のことから、上記の評価である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、研究業績を蓄積するをともに、これまでの研究を取りまとめてゆく。今年度の上半期で、報告書としての体裁をととのえ、12月を目途に製本する。 依頼報告、招待報告は継続してお引き受けするとともに、各種学会での報告を実施する。 また、アウトリーチ活動、とくに小児科病棟での七夕会、クリスマス会、自閉症児とのカラオケ大会、肢体不自由な人たちとのバスケットボールなども継続する。小児科でのボランティアは2015年度で10年目をむかえる。 論文執筆も継続し、適宜、発表してゆく。
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