研究概要 |
2013年度は, 1自由度Hamilton力学系のBirkhoff標準形の解析接続, Lie群上の自由剛体(左不変計量についての測地流)の力学系についての安定性解析の2つのテーマを主軸に研究を行った. 1. Birkhoff標準形とは, Hamilton力学系についてHamilton函数の平衡点の近傍での標準形のことである一般にBirkhoff標準形は発散級数の範疇でのみ考えられるが, 1自由度Hamilton力学系については収束級数の範疇で考えられることが知られている. Birkhoff標準形は平衡点の近傍でのみ考えられる局所的対象であるが, 本研究ではその大域的挙動を次のような方法で考察した. まず, Birkhoff標準形の逆函数微分をある周期積分で表示する公式を与えた. この公式を基に, Birkhoff標準形の逆函数微分をエネルギー値について解析接続しその大域的挙動を調べた. 具体的には, 単振り子および自由剛体(SO(3)上の測地流)の力学系についてBirkhoff標準形の逆函数微分の解析接続を行い, それが非自明なモノドロミーを持つことを明らかにし具体的にモノドロミーを計算した. とりわけ, 自由剛体の力学系についてはBirkhoff標準形の逆函数微分のモノドロミーが力学系から自然に得られる楕円ファイバー空間のモノドロミーを与えることが示された. これらの結果についてJ. -P. Frangoise氏(Paris VI)との共著論文2編を投稿中である. 2. 単純Lie群上で自由剛体の力学系の一般化となる可積分な測地流を考えることができることが知られている, 本研究では特にユニタリー群, 複素単純Lie環のコンパクト実形・正規実形上の一般化された自由剛体を採り上げ, その平衡点の安定性を調べた. その結果, ユニタリー群・コンパクト実形の場合の孤立平衡点はすべて楕円型であり, 他方正規実形の場合は孤立不動点はすべて双曲型になることが示された. ユニタリー群の場合について結果をT. Ratiu氏(EPFL)との共著論文にまとめ投稿のため改稿中である.
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