昨年度までに薬理学実験によって概日リズムおよび睡眠覚醒の細胞間情報伝達を担う新規因子(遺伝子)の候補を挙げた。本年度は遺伝学的検証を行った。 [1] CRISPR/Cas9を用いて候補因子をノックアウトしたマウスを作製し、概日リズムおよび睡眠覚醒状態を観察したところ、野生型と比べて睡眠時間・概日睡眠パターンが有意に異なる表現型が得られた。また、候補因子から推察した他の関連遺伝子のノックアウトマウスを作製したところ、野生型と有意に異なる睡眠時間・概日睡眠パターンをもつ、いくつかの遺伝子が得られた。 [2] 候補因子およびその発現細胞の役割を理解するために、この因子を発現する細胞特異的にDREADD(hM3Dq)を発現する遺伝子改変マウスを作製した。CNOによる細胞の人為的な活性化を行うと、野生型とは異なる睡眠時間・パターンが得られた。また、候補因子発現細胞の神経活動の経時変化を蛍光 in situ hybridizationにて観察を行った。 これらの個体を用いた実験により、本因子が概日リズムおよび睡眠覚醒の細胞間情報伝達に寄与すること示唆された。
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