研究概要 |
本研究は, 高い比表面積と空隙率を有する静電紡糸不織布にグラフェンを形成することで高い導電性を付与し, 酵素バイオ電池電極として応用することにより酵素の担持量を増大させ酵素バイオ電池の出力向上を目指している. 本年度は静電紡糸不織布への導電性付与と評価, その応用について検討した. 導電性付与として化学気相成長法(CVD法)と無電解金属メッキ法の2つのアプローチで研究を行った. (1) CVD法による導電性付与 CVD法により得られる導電性の高い材料としてカーボン材料があり, 特にグラフェンの蒸着により高い導電性を付与することができると期待される. まずCVD法を用いたカーボンの蒸着による不織布への導電性付与, また内部の物質を除去することによるカーボン不織布の作製を検討した. 静電紡糸不織布へのカーボンの蒸着によって導電性を付与し, 内部の物質を除去することでカーボン不織布を作製することに成功した. (2) 無電金メッキ法による導電性付与 高い導電性を持つ静電紡糸不織布のモデルとして金メッキ静電紡糸不織布を選択し, 酵素バイオ電池へ応用することで酵素固定化量の増大による出力の向上を検討するために, 金メッキ不織布の作製と酵素固定化担体としての検討を行った. 結果として, 金メッキ静電紡糸不織布に固定した酵素は板状金に固定した場合と比較して見かけの体積当りの活性は226倍であった. 金メッキ静電紡糸不織布は酵素担体として多量の酵素を担持できることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標であったグラフェンの合成には至らなかったが, 静電紡糸不織布にCVD法によるカーボン蒸着を行うことで導電性付与に成功した. また, 高い導電性を持っモデル不織布として金メッキ静電紡糸不織布を用いて酵素固定化担体としての有用性を検証した結果, 平板と比較して高い活性を示した. 酵素量の増大による酵素バイオ電池の出力向上という研究の目的に対して重要な知見を得た. よって研究はおおむね順調に進展していると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は, 導電性付与した静電紡糸不織布を酵素電極として応用する. 酵素から電極への電子伝達に関しては直接型と間接型に分類されている. 本研究は, 最終的に酵素電池の出力向上による電池の小型化を行い体内埋め込み型バイオ電池として応用することを目指している. 体内埋め込み型の場合には, 間接型の電子移動において必要とされる電子伝達物質を用いることは好ましくないため, 直接型の酵素電極を用いることが望まれる. そこで今後は静電紡糸不織布を電極材料とした直接電子移動型酵素電極の開発に取り組む. さらに, 体内埋め込みを想定するため, 電極への生体適合性付与について検討を行う.
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