本研究は,高い比表面積と空隙率を有する静電紡糸不織布にグラフェンを形成することで高い導電性を付与し,酵素バイオ電池電極として応用することにより酵素の担持量を増大させ酵素バイオ電池の出力向上を目指している.本年度は昨年度に引き続き,導電性を付与した静電紡糸不織布の評価と電極としての応用について検討した.無電解金属メッキ法を用いたアプローチで酵素固定化担体への応用と酵素電極への応用研究を行った. (1)酵素固定化担体としての応用 酵素反応を回分操作により8回繰り返し行うことでラッカーゼ固定化金メッキPAN不織布の再使用可能性を評価した. 5回繰り返し反応を行った後に80.2 ±4.3%の酵素活性を維持していた.また8回繰り返し後には78.1±3.62%の酵素活性を維持していた.これらの結果は,学術論文としてChem. Eng. J.誌に採録された(研究発表7-1-1参照). (2)無電解金属メッキ不織布の酵素電極への応用 酵素電極において酵素反応により得た電子を効率的に電極に伝達する機構の構築が重要となる.グルコース酸化電極の反応機構の一つにグルコース脱水素酵素(GDH)とニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)の酸化反応を組み合わせた系がある.本研究では,NADHの酸化触媒かつ酵素固定用のリンカーとしてイールマン試薬(DTNB)を静電紡糸不織布に吸着固定した.DTNBを不織布電極に吸着により修飾した結果,DTNBに由来する酸化還元ピークは確認された.しかし,DTNBにGDHを共有結合固定して5 mMNAD存在下にてグルコースの酸化反応を試みたが,DTNBの触媒作用は認められなかった(Fig.2b). DTNBの修飾方法を工夫することにより触媒化することが可能であると考えている.
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