研究実績の概要 |
前年度に引き続きマンガン触媒を用いたアミドの加アルコール分解反応、亜鉛触媒を利用した脱着可能なアミド配向基に関する研究を行った。 2価のマンガン錯体Mn(acac)2とキレート配位子の2,2-ビピリジンを組合せた触媒系は、亜鉛触媒に比較して、より効率的にアミドのエステル化を進行させることを見出した。この内容は学術誌に掲載済である。この触媒系はアルコールを求核剤とする他の反応にも利用することが可能と考えられ、ニトリル基や単純なアルキル置換3級アミドへの基質展開を行い、予備的な結果ではあるものの目的化合物が得られており、これまでの亜鉛触媒系で適用できなかった反応への応用が期待できる。 前年度までの研究で、エタノールアミド化合物は分子内アルコールへのアシル転移を経由したエステル化反応が温和な条件下で進行する特徴的な性質を見出し、アミド窒素上に様々な置換基を持つ3級アミドにも適用可能であることを見出した。この特徴を利用して、アミド基を着脱可能な配向基としてリチウム試薬を用いた芳香族化合物のメタル化反応を検討した。アミド窒素上の置換基を種々変更した結果イソプロピル基が最適とし、TMS保護基したエタノールアミド化合物がブチルリチウムによるオルトリチオ化反応に効果的であり、ヨウ素によりクエンチしたところ高収率でオルト位の官能基化を達成した。このアミド化合物は亜鉛触媒の存在下アルコールで処理することによりはエステル等価体と見なせる一方で、同様の反応を単純なエステル化合物を配向基とした場合には基質の分解が起こるため、エステルで適用不可な反応に適用できる点で興味深い。この反応についてはミュンヘン大学Knochel教授の研究グループと引き続き共同研究を進めており、収率向上のため条件最適化および天然物合成を志向した反応適用範囲の拡大を目的として、所属研究室で検討を継続している。
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