研究課題/領域番号 |
13J01620
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
栗之丸 隆章 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | タンパク質 / 酵素 / 高分子電解質 / 基質 / 活性化 / ポリアミン |
研究実績の概要 |
本研究では、高分子電解質を利用した酵素超活性化現象を応用した新規診断法を開発することを目的としている。当該年度では、より優れた活性化効果を示す添加剤を探索するための知見を得るべく、超活性化現象における添加剤の影響を系統的に調べた。 まず、添加剤としてアルキル鎖やアミノ基の個数が異なる直鎖アミン化合物を12種類使用し、アニオン性基質に対するα-キモトリプシン(ChT)の超活性化を評価した。その結果、アルキル鎖やアミノ基の個数が多い直鎖アミン化合物ほど、ChTが超活性化する傾向が確認できた。すなわち、直鎖アミン化合物の疎水性と多点性がChTの超活性化に重要な役割を果たしていることを新たに発見した。さらに、分子動力学(MD)シミュレーションから、直鎖アミンとChTの弱い相互作用が観察された。これらの知見は酵素学の専門誌であるJournal of Molecular Catalysis B: Enzymatic誌にて発表した。 次に、添加剤として環状アミン化合物を使用し、同様の実験を行った。ここで得られた結果を直鎖ポリアミンのそれと比較すると、興味深い傾向が観察された。すなわち、環状ポリアミンは、多点性・疎水性に比例してChTの活性化率が増加するという直鎖ポリアミンで得られた法則から外れることが明らかとなった。以上より、ChTの超活性化には、添加剤の立体構造依存性があることが明らかとなった。 これらの結果から、本研究で狙う優れた活性化剤の探索における有用な知見が得られたと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、酵素活性化剤として直鎖アミン化合物に着目して研究を進めてきた。これは当初の研究計画とは多少異なるが、予想以上に興味深い結果が得られた。これらの結果は、本研究の目的である活性化効果の高い添加剤のデザインをする上での重要な指針となるため、本研究の達成目標枠内である。さらに、これらの結果をまとめた原著論文が掲載許可になったことを考慮すると、今回の研究計画の修正は適切な判断であったといえる。活性化効果の高い添加剤のデザインは次年度以降に行う。
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今後の研究の推進方策 |
来年度では環状ポリアミンによるChTの超活性化に関する基礎知見を収集し、それらの知見に基づいて、より活性化効果の高い新規添加剤のデザインすることを目指す。用いる環状ポリアミンとしては、シクレンやヘキサシクレンなどを予定している。加えて、超活性化する酵素を探索することを目的に研究を行う。
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