研究実績の概要 |
嗅内皮質は、海馬と大脳皮質のあいだの情報伝達を中継し、空間記憶や文脈依存記憶に重要な役割を果たす脳部位である。初年度に見出した前障から内側嗅内皮質への神経投射について、光遺伝学を用いて行動学的な役割を解析した。まず、ウイルスベクターの2重感染により、この投射経路に選択的に光感受性分子を発現させた。続いて光照射により神経活動を抑制すると、文脈依存的恐怖条件付け課題の成績が低下した。一方で自発運動量や不安様行動は変化しなかった。こうした結果から、前障は、嗅内皮質の機能を調節することで文脈依存記憶に寄与すると考えられる。前障の働きはこれまでほとんど理解されていなかったため、本研究は前障の機能の全容解明に向けた重要な足がかりになると考えられる。 また本年度は、自由行動下におけるシナプス可塑性と海馬神経活動の因果関係について調べた研究内容について、論文の投稿・改訂をおこない発表した (Kitanishi et al., Neuron, 2015)。
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