本年度は、Aospt3とlaeA及びAohst4(以下hstD)による二次代謝制御機構解明並びにhstDの下流因子であるLaeAタンパク質の核局在機構について解析した。 1. Aospt3とhstDとlaeAの関係について 糸状菌における重要な二次代謝と分化の制御因子であるlaeAとの関連について検討する為、Aospt3破壊株におけるlaeAの遺伝子発現についてノーザン解析を行った。その結果、Aospt3破壊株においてlaeAは高発現していることが明らかとなった。さらに、ΔlaeA ΔAospt3 二重破壊株、ΔlaeA Aospt3 高発現株、ΔAospt3 laeA高発現株を用いた遺伝学的な解析を行った。その結果、Aospt3は、laeAの上流で機能していることが明らかとなった。さらに、hstD、laeA、Aospt3の関係性を明らかとする為、ΔhstD ΔAospt3 二重破壊株、ΔhstD Aospt3 高発現株、ΔAospt3 hstD高発現株を用いた遺伝学的な解析を行った。その結果、hstDとAospt3は、非依存的にlaeAを介し、二次代謝と分化の制御を行っていることが明らかとなった。 2. LaeA の核局在機構について これまでの研究により、hstDとAospt3の下流因子であるlaeAが機能するためには、S-adenosyl methionine(SAM)と結合する事及び核に局在する事が重要であることが分かっている。そこでLaeAを発見した研究室であるUniversity of Wisconsin-MadisonのNancy Keller 研究室に滞在し、糸状菌のモデルであるAspergillus nidulansを用いて、SAMがLaeAの核局在に与える影響について解析した。その結果、SAMは、LaeAの核局在において重要な役割を担うことが明らかとなった。
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