共生細菌によるホストの生活史・繁殖戦略の進化について明らかにするために本年度行った研究は以下の通りである。 マメゾウムシにおけるWolbachiaによる生活史・繁殖形質の影響に関する研究は、アカイロマメゾウムシについては、感染系統の生活史・繁殖形質のデータをまとめ、雌雄の性選択の指標となる形質があるか解析し、論文としてまとめている段階である。また、作出した非感染系統を用いて、生活史・繁殖形質に関わる形質を調べ、データをまとめている段階である。アズキゾウムシに関しては、オスの交尾前後の性選択の関係性を調べた研究成果を国際誌に掲載した。これにより、今後共生細菌がホストの交尾前後の性選択の関係にどのような影響を与えてきたかについて明らかにすることが期待できる。そして、共生細菌Wolbachia感染系統と非感染系統の生活史・繁殖形質を比較した研究では、昨年度は執筆中であったが、現在は国際誌の査読を受け、再投稿を終えた段階である。本来の研究計画の予定から遅れたが、この論文のデータをもとに、集団中にWolbachia感染が広がるかどうか、現在の所属する研究室の構成員と相談し検討していく予定である。この論文に続き、アズキゾウムシほどの高頻度ではないがCIを起こすWolbachiaに感染しているスジコナマダラメイガでの研究成果も、アズキゾウムシでの論文で査読者のコメントを参考に原稿を修正した後、国際誌に投稿する予定である。 タバコシバンムシでは、オスの性選択と繁殖戦略を調べ、その成果を論文として一報を国際誌へ投稿し、もう一報も投稿間近である。また、学会にて、この成果に関してポスター発表を行い、研究者から有益なアドバイスをいただいた。このアドバイスをもとに、タバコシバンムシに報告されている共生細菌の除去を行い、性選択、生活史と共生細菌との関係の研究をさらに進めていく予定である。
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