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2014 年度 実績報告書

非クラマース縮退を持つプラセオジム化合物における多極子揺らぎと超伝導対形成の相関

研究課題

研究課題/領域番号 13J01690
研究機関広島大学

研究代表者

松本 圭介  広島大学, 先端物質科学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードプラセオジム化合物 / 超伝導 / 多極子秩序
研究実績の概要

近年,カゴ状結晶構造をもつ化合物の多彩な物性が注目を集めている。私は,4f電子を2個持つPrイオンがカゴに内包されたPrT2Zn20 (T:遷移金属)に着目した。この系の結晶場基底状態は,磁気双極子の自由度を持たず,四極子と八極子の自由度のみを有する非磁性G3二重項である。そのため,これら高次の多極子が絡んだ物性の発現が期待される。私は,T=Irの系において,反強四極子(AFQ)秩序(TQ=0.11K)と超伝導(Tc=0.05K)が共存することを見出し,超伝導対形成に四極子揺らぎが関与している可能性を指摘した。一方,非磁性のLaIr2Zn20はTc=0.6KのBCS超伝導体である。本年度は以下の実験を行った。
(1)昨年度までにPr1-xLaxIr2Zn20 (0<x<1)の試料を作製し,電気抵抗率と交流磁化率を測定した。Tcはx<0.5で殆ど上昇せず,x>0.5で上昇する。一方,電気抵抗測定では,TQでの異常をx=0でしか観測できていなかった。そこで,0.06 Kまでの比熱測定装置を立ち上げ,Pr1-xLaxIr2Zn20 (x>0)におけるTcとTQの関係を調べた。比熱測定から,TQはx<0.09で消失することが明らかになった。Tcはx<0.5で変化しないことから,TQとTcの相関は弱いことが示唆される。これらの内容について,国内外の学会で発表し,原著論文として投稿した。
(2)PrIr2Zn20の比熱や弾性定数の測定から,TQでAFQ秩序が起こっていることはわかっていたが,その秩序変数についてはまだ明らかになっていなかった.そこで,四極子秩序構造と秩序変数について調べるために,フランス・レオンブリュアン研究所(LLB)において磁場中の中性子回折実験を行った.禁制反射の指数の磁場誘起反強磁性モーメントを観測し,AFQ秩序であることを微視的手法ではじめた確認した。なお,ビームタイムの申請を自ら代表者として行い,7日間のビームタイムを確保した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

Pr1-xLaxIr2Zn20におけるTcとTQのx依存性について明らかにした。電気抵抗測定では,TQでの異常をx=0でしか観測できていなかった。そこで,0.06 Kまでの比熱測定装置を立ち上げ,x>0におけるTQでの比熱異常の観測を試みた。電気抵抗と比熱の測定の結果から,Tcはx<0.5で殆ど変化がないにも関わらず,TQはx<0.09で0.07 K以下に下がることを明らかにした。このTcとTQのLa置換量依存性は,両者の相関が弱いことを示唆している。一方で,PrIr2Zn20とLaIr2Zn20の超伝導特性を比較し,PrIr2Zn20の超伝導対形成において混成効果が重要であることを提案した。これらの内容を原著論文として発表し,国内外の学会で報告した。
また,PrIr2Zn20におけるT<TQでの四極子の秩序構造や秩序変数について明らかにするために,LLBで磁場中での中性子回折実験を行った。磁場誘起反強磁性モーメントの観測に成功し,TQでの異常がAFQ秩序であることを確認した。
以上のことから,本研究は当初の計画以上に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

これまでの実験では,四極子の秩序構造と秩序変数はまだ同定できていない。本年度は,中性子回折の結果に対する解析を行い,秩序変数を同定する。これらの結果について,国内外の学会で発表し,原著論文を投稿する。
また,比熱測定の自動化を進め,効率よく比熱測定できるように更新する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Formation of a superlattice structure and suppression of the magnetic order in Ce1-xPbxPt2 (0 < x < 0.5)2015

    • 著者名/発表者名
      K. T. Matsumoto, Y. Saiga, Y. F. Inoue, T. Takabatake
    • 雑誌名

      Journal of Alloys and Compounds

      巻: 633 ページ: 329-332

    • DOI

      10.1016/j.jallcom.2015.02.051

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Interplay between low-energy optical phonon modes and structural transition in PrT2Zn20 (T=Ru and Ir)2015

    • 著者名/発表者名
      K. Wakiya, T. Onimaru, S. Tsutsui, K. T. Matsumoto, N. Nagasawa, A. Q. R. Baron, T. Hasegawa, N. Ogita, M. Udagawa, T. Takabatake
    • 雑誌名

      Journal of Physics: Conference Series

      巻: 592 ページ: 012024/1-6

    • DOI

      10.1088/1742-6596/592/1/012024

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Anomalous Enhancement of Seebeck Coefficient in Pr-Based 1-2-20 System with Non-Kramers Doublet Ground States2015

    • 著者名/発表者名
      Y. Machida, T. Yoshida, T. Ikeura, K. Izawa, A. Nakama, R. Higashinaka, Y. Aoki, H. Sato, A. Sakai, S. Nakatsuji, N. Nagasawa, K. Matsumoto, T. Onimaru, T. Takabatake
    • 雑誌名

      Journal of Physics: Conference Series

      巻: 592 ページ: 012025/1-9

    • DOI

      10.1088/1742-6596/592/1/012025

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] カゴ状化合物Pr1-xLaxIr2Zn20の超伝導と四極子秩序2015

    • 著者名/発表者名
      松本圭介,鬼丸孝博,脇舎和平,梅尾和則,高畠敏郎
    • 学会等名
      日本物理学会
    • 発表場所
      早稲田大学
    • 年月日
      2015-03-21
  • [学会発表] Pr1-xLaxIr2Zn20における超伝導転移と四極子秩序の相関2014

    • 著者名/発表者名
      松本圭介,鬼丸孝博,脇舎和平,梅尾和則,高畠敏郎
    • 学会等名
      日本物理学会
    • 発表場所
      中部大学
    • 年月日
      2014-09-09
  • [学会発表] Supeconducting properties of Pr1-xLaxIr2Zn202014

    • 著者名/発表者名
      K. Matsumoto, T. Onimaru, Y. Obayashi, K. Umeo, and T. Takabatake
    • 学会等名
      Strongly Correlated Electron Systems 2014
    • 発表場所
      フランス・グルノーブル
    • 年月日
      2014-07-07

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公開日: 2016-06-01  

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