研究課題/領域番号 |
13J01705
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
上羽 貴大 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 非占有準位 / LUMO / ルブレン / 有機薄膜 / 2光子光電子分光 / グラファイト |
研究概要 |
本研究は、金属表面上分子の電子状態への基板の影響を明らかにし、有機テバイスの特性を決定づける要因のひとつである、界面での電荷伝達機構を解明することを目的とする。グラファイト基板上ルブレン蒸着膜の電子励起/緩和過程の解明を進めている。 【表面準位と分子軌道に生じる相互作用の起源の解明】 鏡像準位(表面特有の非占有準位)と、ルブレン分子軌道の相互作用により、分子の励起確率が増大することがわかった。密度汎関数法による量子化学計算と2光子光電子分光(2PPE)による実験の比較を行ったところ、鏡像準位と相互作用するこの分子軌道は、節が極端に少なく、分子全体に大きく広がった、巨大な原子軌道様の分子軌道であることがわかった。このような分子軌道は、対称性の高い骨格をもつC60においてのみ知られていた。非占有準位を観測する手法が少ないためにあまり考慮されてこなかったが、ルプレンのように対称性の高くない分子であっても、このような非占有分子軌道が一般的に存在する可能性がある。そして、このような軌道を利用することにより、界面の分子の光励起の効率を制御できる可能性が示された。 【光励起した吸着分子の励起・緩和過程の解明】 最低非占有分子軌道(LUMO)は、デバイスにおいて電子の伝達経路となるため、その励起緩和過程を理解することが重要である。ルブレン薄膜の第1層と、それ以降の層では、分子の励起過程が異なることを明らかにした。2層目以降では、LUMOへの電子遷移は分子内励起が支配的だが、第1層においては、基板により励起確率が大きく変調を受けている。 LUMOへ励起した電子は、分子膜第3層程度までは基板へのトンネルにより、3層以降では、分子膜内で緩和することが明らかとなった。しかしながら緩和に至るまでの過程は単純ではなく、光励起した分子は何らかの中間状態を経由することが明らかになってきた。この中間状態は、エキシトンに関係すると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【表面準位と分子軌道に生じる相互作用の起源の解明】に関しては、成果を論文に投稿することができた。【光励起した吸着分子の励起・緩和過程の解明】について、緩和過程をまとめるには、もう少し実験を行う必要があるが、目途はついている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定では2PPE光源に光パラメトリック増幅器(OPA)用いることを検討しだが、レーザの繰り返し周波数と光強度の関係から有機薄膜を破壊する可能性があることがわかった。しかしながら、現状の光源を用いて、波長を変えて時間分解測定を行い、緩和過程の励起光エネルギー依存性を調べることにより、同等の研究遂行は可能であると考えている。
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