研究課題/領域番号 |
13J01712
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山尾 僚 九州大学, 理学研究院, 特別研究員(PD)
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キーワード | アリ群集 / 可塑性 / コスト / 防御戦略のシフト / 相利共生 / 種内変異 / 植食性昆虫 / 被食耐性 |
研究概要 |
植物は、植食者に対して物理的防御、化学的防御、生物的防御および被食耐性といった多様な防御を進化させており、多くの種がこれら複数の防御形質を同時に備えている。植物の防御戦略を明らかにするためには、各防御形質の種間および腫内変異に注目し、生育場所の利用可能な資源の種類や量や生物的環境などと関連づけて多角的に解析する必要がある。 本年度は、アカメガシワを用いて、植物が生育場所の資源の種類や量に応じて異なる組み合わせの防御形質を用いる事を明らかにした。土壌養水分が少なく光環境が良好な開放地では、物理的防御と化学的防御を用い、逆に土壌養水分が豊富で暗い林冠ギャップではアリによる生物的防御が機能していた. また、土壌養水分量や光条件が開放地と林冠ギャップの中間の値を示す林縁部では、アリによる生物的防御に加え、高い被食耐性能力も備えていた。これらの結果から、植物は生育環境に応じて、発達させる防御形質の組み合わせを可塑的に変え、植食者から防御している事が示された。 さらに、各防御形質の生産コストを評価を評価すると共に、アリの来訪に応じた植物の防御形質および、成長速度の変化を調査した。その結果、1)生物的防御形質のコストは、物理的、化学的防御形質のコストに比べて低い、2)埴物はアリ類の来訪に応じて、化学的防御形質への投資を減らし、コストの低い生物的防御をおこなう、3)アリ来訪条件下では、アリ不在条件に比べて成長率が大きいという結果を得た。これらの結果は、植物はより早い成長を達成するために、コストの低いアリを介した生物的防御を行うことを示している。また、植物は林縁部や林冠ギャップなどの他植物との光を巡る競争が激しい条件下では、アリによる生物防御を行なう事で、より早い成長を可能にしている事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに、植物が利用可能な資源の種類や量に応じて異なる防御形質の組み合わせを発達させている事を明らかにした。また、アリの存在に応じた防御戦略の変異を明らかにし、生物的防御のコストが他の防御に比べて低い事を実験的に示した。これらの結果を予定通りに国際生態学会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、植食者や共生者であるアリ群集が異なる地域個体群において、植物がどのような組み合わせで防御形質を発達させているのかを明らかにする。また、各防御形質の組み合わせの効果についてもより詳細な実験を通して明らかにする。
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