研究課題/領域番号 |
13J01713
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
馬場 正和 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | シリサイド / 少数キャリア拡散長 / 電子線誘起電流法 / 結晶粒界 / ケルビンプローブ原子間力顕微鏡法 |
研究概要 |
Si (111), Si量(001)基板のどちらがデバイス化に適した結晶を成膜できるのかを、少数キャリア拡散長、結晶粒界の特性の観点から決定した。Alワイヤー/undoped BaSi_2 (300 nm)/Si (111)構造に対して電子線誘起電流(EBIC)法を用いて少数キャリア拡散長を算出したところ、0.2 μmのエピタキシャルドメインに対して9.4㎛であることが既に報告されている。同様にして、Wプローブ/undoped BaSi_2 (400 nm)/Si (001)構造に対してEBIC法により少数キャリア拡散長を算出したところ、3.0μm程度のエピタキシャルドメインに対して1.5μmであることが分かった。 undoped BaSi_2/Si (111)は微小粒に対して長い拡散長であり、undoped BaSi_2/Si (001)はSi (001)を用いた場合よりも大きい粒であるが、短い拡散長であることから、それぞれの結晶粒界における性質に対する知見を得る必要があると考えた。評価方法には、ケルビンプローブ原子間力顕微鏡(KFM)法を用い、表面ポテンシャルから算出した粒界における障壁高さ、バンドの曲がる向きから考察を行った。undoped BaSi_2/Si (111)では、粒界は粒内よりも高いポテンシャルを有しており、粒内に比べて正に帯電していることが示された。このことから、粒界においてバンドは下に30meV凸の構造を取り、少数キャリアである正孔に対して再結合中心として働かないことが示唆された。undoped BaSi_2/Si (001)では、粒界は粒内よりも低いポテンシャルを有しており、粒内に比べて負に帯電していることが示された。このことから、粒界においてバンドは上に40~60meV凸の構造を取り、少数キャリアである正孔に対して再結合中心として働く可能性が示唆された。KFM法により評価された粒界の性質は上記、二種類のSi基板上に形成したBaSi_2の粒径と少数キャリア拡散長の関係をうまく説明することができる。 本年度は、少数キャリア拡散長と粒界の性質の観点から、Si (lll)を用いた方がデバイス化に適したBaSi_2膜を形成できることを示した。さらに、粒界が再結合中心として働かないことから、太陽電池デバイスを作製した際に、高い変換効率の実現が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
少数キャリア拡散長、結晶粒径の性質からデバイス化に適したSiの面方位を決定することに成功した。ただし、断面方向から電子線誘起電流法により深さ方向における結晶粒界の性質を直接観察できていないため、粒界性質に対する十分な理解が得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
undoped BaSi_2/Si (111)に対して断面方向での電子線誘起電流法により粒界の性質に対する理解を深める。また、粒界が粒内に比べて高いポテンシャルを有している理由を、産総研関西センター、香山正憲氏と共同で、第一原理計算を用いて解明する。粒界が再結合中心として働かないことから、当初の予定である粒径拡大は行わず、実用化を見据えて単結晶Siから多結晶Si基板への展開を行っていく。さらに、多結晶Siの粒界がBaSi_2の膜にどのような影響を与えるのかを解明する。加えて、pn接合構造の実現を目指して、p型、n型に伝導型制御したBasi_2膜についても結晶粒界の性質を調べる。
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