研究課題/領域番号 |
13J01713
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
馬場 正和 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 半導体デバイス / ホモ接合 / 結晶粒界 |
研究実績の概要 |
Si基板上へundoped n-BaSi2, B-doped p-BaSi2の積層構造をMBE法により形成した際に、Bドープp層においては、粒界部分、p/n接合界面においてクラスター化したと考えられるBの析出物が多く存在していることも確認された。電子線誘起電流法(EBIC法)を用いて界面近傍における電場分布を断面方向から評価したところ、界面において電場の存在が確認でき、pnホモ接合の形成に成功したといえる。ただし、信号強度はp-Si/n-BaSi2のヘテロ界面と比較して小さく、p層のキャリア密度が小さい可能性が推察される。この原因としては、添加したBがSiと置換せずにクラスター化したため、求めたキャリア密度まで高まらなかったと考えられる。 ケルビンプローブ原子間力顕微鏡(KFM)を用いて、多結晶Siの粒界近傍における、配向成長したBaSi2膜部分中のバンドベンディングを調べたところ、大きなバンドベンドは観察されなかった。これは、多結晶Si基板上に形成した際に、Si基板の粒界はBaSi2膜中に引き継がれないことを示唆している。将来的にBaSi2をより安価なガラス基板上に形成する際に、Al誘起結晶成長法(AIC法)を用いて形成した(111)方向に面方位を制御した多結晶Si面を用いる予定である。本研究から、単結晶Si(111)面状に形成したBaSi2の知見を、直接、多結晶Si(111)へ展開した場合に用いることができるといえる。 前年度に行った研究から、Si(111)面上に配向成長したBaSi2の粒界は下に凸のバンドベンディングを有しており、少数キャリアの正孔を捕獲し難い構造であることが明らかにされた。TEM観察から(011)/(011)界面で構成される双晶であることが判明し、界面エネルギー的観点からBa原子・Si四面体から構成される界面が安定な粒界であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の成果を基に、Si(111)基板上にBaSi2のpn接合を作製し、界面に電場が存在していることを明らかにした。p型層のキャリア密度が十分に高くないことは太陽電池として動作させる上で改善が必要であるが、高キャリア密度化を達成することで太陽電池として変換効率が得られることが期待できる。また、太陽電池に好ましい粒界の構造・特性を把握できた点は、3年目の研究を進める上で非常に大きな利点である。
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今後の研究の推進方策 |
p型BaSi2層中のBの活性化として、高温アニール処理、レーザーアニール処理の2点を検討している。BaSi2は高温ストレス下に長時間放置するとクラックが発生してしまうため、膜に影響を与えない条件の探索を第一に行う予定である。また、膜厚制御、表面反射防止膜堆積を通して太陽電池構造の最適化を図り、実際に光照射を行うことで太陽電池として動作することを実現する。
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