研究課題/領域番号 |
13J01759
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中野 正浩 独立行政法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 特別研究員(PD)
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キーワード | 有機半導体 / 有機トランジスタ |
研究概要 |
有機半導体デバイスは、軽量かつフレキシブル・プリンタブルであるなどの利点から、フレキシブルデバイスやウェアラブルデバイスなどへの応用が指向され、近年さかんに研究が行われている。そのような有機デバイス作成においては、p型(正孔輸送性)およびn型(電子輸送性)材料分子が必要である。しかしながら、現在報告されている材料分子はp型のものが圧倒的多数派であり、n型材料の報告例は未だ少ない、というのが現状である。 本研究代表者はn型特性を示す有機半導体材料分子としてナフトジチオフェンジイミド(NDTI)を新規に合成した。NDTIは電子受容能が高く(E_<LUNO>=4.0eV)、n型トランジスタとして良好な特性(μ_<electron>=0.05㎠V^<-1>s^<-1>)を示した。また、熱・化学的に安定かつ分子修飾が容易であり、NDTIを基本骨格として用いることで、優れた有機半導体材料が創成可能であることが示唆された。 実際に本研究代表者はNDTIを用いてドナーアクセプター型高分子材料を合成し、それらが高性能なn型トランジスタ特性(μ_<electron>=0.17㎠V^<-1>s^<-1>)または、両極性トランジスタ特性(μ<electron>=0.4㎠V^<-1>s^<-1>, μ_<hole>=0.7㎠V^<-1>s^<-1>)を示すことを見出している。また、NDTIベースの両極性トランジスタ材料を用いて論理回路(CMOS-like inverter)を作成し、駆動させることに成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
電子受容性の高いアセンジカルコゲノフェンとして、ナフトジチオフェンジイミド(NDTI)を新規に合成することができ、その特性を明らかとすることができた。さらに、NDTIが有機半導体材料の基礎骨格として優れていることが明らかとなり、当初予定していた有機n型トランジスタ材料だけでなく、両極性トランジスタや有機薄膜太陽電池デバイス向けの材料を開発することも可能であることを見出すことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
NDTIをベースとした両極性トランジスタ材料の開発に注力していく予定である。トランジスタにおける両極性挙動は単一の無機材料を用いて実現させることは極めて困難であるため、有機材料ならではの特性であると考えられることから非常に興味深い。 NDTI誘導体を用いて高移動度な両極性トランジスタ材料を開発し、それらを用いて高性能かつ低消費電力なインバータなどの論理回路を作成する。
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