研究課題/領域番号 |
13J01787
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松本 徹 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 無機-有機物進化 / イトカワ / レゴリス / S型小惑星 / 宇宙風化 / 走査型電子顕微鏡 / 透過型電子顕微鏡 / 水質変成実験 |
研究概要 |
太陽系初期の無機-有機物進化を考える上で、太陽系初期に存在した様々な母天体環境での物質の進化を知ることが重要である。そこで炭素質コンドライト母天体とは異なり、有機物はほとんど存在していないと考えられるS型小惑星イトカワ表面から採集したレゴリス粒子について、粒子の表面に有機物や水環境の存在を示す構造を探すため、イトカワ粒子の電界放出型-走査型電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて表面観察を行った。観察の結果、粒子表面には、表面に付着しているように見える、数十nmの多角形状の物質が観察された。この物質は、サンプル保管の際の汚染物、もしくは粒子に元々付着していた物質である可能性が考えられる。汚染物ではない場合、この物質は、宇宙空間に暴露されている期間に粒子表面に付着した物質である可能性、もしくは自形をもっているようにみえることから、母天体内部で水が存在する環境で沈殿した結晶物質である可能性がある。現段階ではこの物質の元素情報などについては分かっていない。今後、AFMラマン測定等の技術を用いて、詳細な分析を行う予定である. また、イトカワ粒子の表面観察の過程で、大きさ数十nmのドーム状の構造を発見した。このドーム構造のFE-SEM, 透過型電子顕微鏡(TEM/STEM)を用いた断面構造の観察を行った。結果、小惑星表面に、主に太陽風が照射されることによって形成される宇宙風化リムであることが明らかとなった。本研究の観察から、地球外物質の宇宙風化リムの表面モルフォロジーがFE-SEMによって非破壊で観察できることが初めて示された。粒子表面のリムの分布から、レゴリス粒子は、小惑星表面で衝突現象に起因する振動により破砕・移動/かき混ぜが起こっていることが分かった。小惑星表面の宇宙風化は小惑星の反射スペクトルを変化させると同時に、小惑星表面での化学進化を促す現象として重要である。今回の観察から小惑星全体の宇宙風化の進行は、天体表面で起こる振動等の活動と密接に関連していることが示された。また、上記のイトカワ粒子観察を通じて、本年度は水質変成実験生成物の観察に必要な透過型電子顕微鏡の観察技術を習得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
水質変成実験に関して必要な透過型電子型顕微鏡の技術習得を行った。また、実験に必要な装置導入、MgO-SiO_2を用いた水質変成予備実験が進行している。ただ本年度はイトカワ粒子の観察を主要な分析対象としたため、実験計画からやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度を通じて、実験試料観察に必要な透過型電子型顕微鏡の技術習得を行った。また、MgO-SiO_2を用いた水質変成予備実験を行った。来年度、Fe、有機物を含めた出発物質を使用した水質変成実験を行う計画である。
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