研究実績の概要 |
本年度は1.水中で高温で不溶となるLCST型セグメントと、反対にイミダゾリウム塩型側鎖を有し、低温で不溶となるUCST型セグメントからなるブロックコポリマーの自己組織化挙動を蛍光測定により検討し、2.有機溶媒/イオン液体分散系でのカチオン重合のモデル反応として、イオン液体中におけるカチオン重合を検討した。1では、ピレンを用いた蛍光測定により低温および高温でブロックコポリマーが形成する集合体の極性を評価したところ、低温では極性の高い部位が、高温では極性の低い部位ができていることがわかった。このような特異的な自己組織化挙動は性質の異なる複数の化合物を内包可能なキャリアとしての応用が期待される。また、2では、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを対アニオンとして有するイミダゾリウム塩型イオン液体中でのイソブチルビニルエーテルのカチオン重合を検討した。四塩化チタンを触媒とし、プロトントラップ剤として2,6-di-tert-butylpyridineを用いたところ、分子量は計算値に近くなり、制御カチオン重合が進行した。また、添加塩基を用いずとも重合が比較的制御されたことから、イオン液体の対アニオンが生長末端カチオンと相互作用し安定化する機構が示唆された。さらに、側鎖にイミダゾリウム塩構造を有するビニルエーテルのイオン液体中におけるカチオン重合を検討したところ、ポリマーが得られ、イオン液体がこのようなイオン性モノマーの重合に有効であることがわかった。 このように本年度は、上記ブロックコポリマーが明確に異なる性質を持つ集合体を形成することを見出し、またモデル反応として検討したイオン液体中でのカチオン重合においては、イオン液体が及ぼす効果について明らかとしており、得られた成果は非常に重要である。
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